全ての子どもたちに音楽で自分を表現する喜びを伝えたい
特定非営利活動法人アジェンダやまがた 代表理事 児玉 千賀子(こだま・ちかこ)
音楽の楽しさでこころをひらいて耳をひらく
2007年、私は「山形を元気にしたい」という思いで、山形市中心市街地活性化への貢献を目的とする任意団体として活動を開始しました。この時期に長女に障がいがあるとの診断を受けたことから、障がい児とその家族を取り巻く環境の厳しさに直面。児童と保護者への一体的な支援の必要性を痛感し、この状況を少しでも改善するために自分ができることを模索し続けました。
そして、09年に開始した事業が乳幼児・障がい児対象の音楽教室です。10年に法人化し、同年、この事業が独立行政法人福祉医療機構の助成事業として採択され、翌11年、山形県指定の指定障害児通所支援事業所の開業にもつながりました。以来、「音楽の楽しさでこころをひらいて耳をひらく」をコンセプトに、既存の音楽療法・音楽教育のシステムによらず、音楽で社会性と協調性を育み、音楽能力を開発することを目的とした独自の指導法「こだまメソッド」に基づくサービスを提供しています。
今年で事業開始から11年目を迎えます。「音楽を奏で合うことで個の違いを許し合い共生する」という経営理念の下、音楽の活用でダイバーシティを実現するための活動を継続しています。
私たちは、サービスの利用のご希望をいただいたとき、一切断らない、という考え方でこれまで事業を進めてきました。その結果、たくさんのお子さま、保護者さまとの出会いがありました。さまざまな障がいや課題にできる限り寄り添い、保護者さまのニーズに応え、どんなケースでも音楽で障がいを改善方向に導くことを大きな方針としてきました。一人ひとりの状況は違いますが、それぞれ成果を出し、皆さまに喜んでいただくことが何よりも喜びであり、その積み重ねで今日があります。
「音楽指導」「研究」「楽器・教材開発」の三位一体で
現在は、通所支援事業所でのサービス提供に加え、17年から山形大学の担当教授と「音楽で障がいを改善すること」をテーマにした共同研究を進めています。さまざまな音楽の観点から障がい特性に合わせた音楽の活用方法、より効果的な支援方法の研究を続けながら、独自のメソッドを確立するまでになりました。さらに広く自分の開発した指導方法を伝えるために、特別支援教育音楽科の指導案、児童の音楽能力の評価スケール、また効率的な授業の準備・運営のためのオリジナル楽器・教材の開発を進め、商品化にも注力しています。
今後は、特別支援教育の音楽指導の環境改善へ貢献するため、全国の教育現場に「こだまメソッド」の楽器・教材・指導法を届けることを目指します。全ての障がい児に音楽を学び、音楽で自分を表現する喜びを感じてもらうため、尽力していきたいと考えています。
会社データ
社名:特定非営利活動法人アジェンダやまがた
所在地:山形県山形市木の実町2-17 ダイヤ37木の実町
電話:023-679-4045
創業:2010年
事業概要:山形市中心市街地活性化、まちづくり活動。子どもの発達支援のための音楽教室
※月刊石垣2021年5月号に掲載された記事です。
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