規制改革推進会議は1日、「規制改革推進に関する答申」を取りまとめ、菅義偉首相に提出した。答申を受け取った菅首相は、「規制改革を着実に進め、悪しき前例主義、行政の縦割りを打破することで、次の成長の突破口をつくっていく」との考えを表明し、改革に意欲を示した。答申では日商の意見の多くが反映。行政手続は大幅に簡素化され、オンライン化も進む見込みだ。
答申は、「成長戦略」「雇用・人づくり」「投資」「医療・介護」「農林水産」「デジタルガバメント」の各ワーキンググループの議論を反映させたもの。会社設立時の定款認証に係る公証人手数料の引き下げ、行政手続の書面・押印・対面の見直し、オンライン教育の推進、飲食店などの道路占用許可基準の緩和、工事現場などにおける専任・常駐義務などの見直し、介護サービスの生産性向上など日商が求めていた多くの規制改革項目が盛り込まれている。
長年にわたり、日本商工会議所が改善を強く求めてきた「会社設立時の定款認証に係る公証人手数料の引き下げ」については、会社の設立に係る負担を軽減し、起業促進の観点から手数料の引き下げを検討し、今年度中に必要な措置を講ずることが明記された。また、遅くとも令和7年度までに公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化を目指すことなども盛り込まれている。
行政手続における書面・押印・対面規制の抜本的な見直しや、添付書類の削減など手続自体の簡素化・標準化についても多くが実現。99%超の手続で押印義務が廃止され、97%超の手続が令和7年末までにオンライン化する方針が示されたほか、行政の契約においてクラウド型の電子署名が利用できるなどの改革が実現した。
また、オンライン利用率を引き上げる目標を設定。事業者と地方公共団体の間の手続について、所管府省が、書式・様式の標準化などを進めつつ、オンライン化を行う取り組みも開始される。
飲食店などの道路占用許可基準の緩和に関しては、国土交通省、警察庁で、道路占用システムによる一括(ワンストップ)の申請が可能となるように対応することが明記された。地方公共団体などの道路管理者にも、オンライン申請を促進させる国の方針を周知することなども盛り込まれている。
一方で、日商が要望していた要件を満たした企業による農地所有を認めることなどの農業分野の規制は今年も懸案として残った。国家戦略特区に指定された兵庫県養父市で認められている規制緩和措置の全国展開が必要であり、日商では引き続き改善を求めていくことにしている。
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