テーマ別誌上セミナー “逆風”の今、地域密着店こそチャンス YouTubeを活用して全国繁盛店を目指す!

アフターコロナに対応しつつ業績を上げるため、今、中小店経営者が取るべき販売戦略とは何か。そこで、家業のカメラ店を専門チェーンにし栃木県民のカメラ・レンズ消費額日本一を達成(総務省調べ)したサトーカメラの経営者であり、商業経営コンサルタントとしても小売り・流通業界からカリスマ的支持を得ている佐藤勝人さんを誌上講師に迎えた。「無料オンラインツールを活用して全国繁盛店を目指す方法」を、分かりやすく指南してもらった。

佐藤 勝人 (さとう・かつひと)

日本販売促進研究所・商業経営コンサルタント/サトーカメラ株式会社代表取締役副社長/想道美留(上海)有限公司・チーフコンサルタント/作新学院大学客員教授/宇都宮メディアアーツ専門学校特別講師/商業経営者育成の勝人塾・塾長

佐藤 勝人(さとう・かつひと) 1964年、栃木県宇都宮市生まれ。23歳で家業のカメラ店を業態転換し、社員ゼロから兄弟でスタート。「想い出をキレイに一生残すために」という企業理念の下、大手チェーンに負けない独自の経営スタイルを確立し、現在は県内に11店舗を展開。また、全国15カ所で商業経営者育成塾「勝人塾」などを主宰。日・米・中で年間200回ものセミナー・講演を行い、各地の商工会議所でも登壇多数

中小企業にこそYouTubeを使った販売を勧める理由

LINEやYouTubeなどの無料オンラインツールはコミュニケーションツールだと思われていますが、商業者にとっては〝販売ど真ん中〟で使えるツールです。

サトーカメラでは一日の営業時間を2時間短縮し固定費を下げながらも、ほぼ無料のオンラインツールを使うことでコロナ禍で消えたリアル店舗の売り上げをカバーしています。

まず、自店のLINE公式(※)をリアル店舗のお客さまに友達登録していただきます。そしてハガキDMの感覚で商品情報を送るのです。ハガキDMは一通送るのに印刷代込みで100円程度かかりましたが、LINE公式は一通当たり2円程度です。しかも個人のスマホに直接届くから確実に見てもらえる。費用対効果は段違い。

そのLINEに、自店のYouTubeチャンネルにアップした動画のURLを必ず載せて、YouTubeに誘導します。今のお客さまは商品について知りたいときは説明書など読まず、YouTubeで商品名を検索して動画を見るからです。カメラのように操作が伴う商品や、つくる様子が見ていて楽しい商品を扱うお店は特に、YouTubeを使った販売をお勧めします。

その際のポイントは、主役はあくまでも商品だと認識すること。動画の内容も商品の説明に徹してください。「ジャパネットたかた」で先代社長が商品の魅力をとことん説明していましたね。あのイメージです。私はYouTube販売をこれから始める社長には「ジャパネットたかたの動画を何十回も見るように」と伝えています。

また、最初は生配信から始めるのがお勧めです。ライブなら、切ってつなげたりテロップを入れたりといった編集が要らないから、手間的にも技術の面でも取り組みやすいはずです。慣れてきたら編集技術も覚えて、最初から収録動画を撮るもよし、生の録画を動画に再編集するもよし。使い方を覚えながらYouTubeに撮り溜めていくのです。

※ LINEのビジネス用途版。月利用料5000~1万5000円で毎月1万5000~4万5000通のメッセージが送れる。

動画でも生配信でも売り込む姿勢を見せる

YouTubeで売っていくためのコツは、貪欲に売る姿勢を見せること。ライブでも動画でもその方が再生回数が伸びます。

皆さんがYouTube販売を始めて最初に壁を感じるのがここだと思います。「露骨に売る姿勢を見せると登録者数が減る」という思い込みを捨てられるかどうか。

たとえ登録者数が減っても構いません。それより、一度に100人を相手に接客したことがありますか? ほとんどの人は、ないはずです。YouTubeを使えば無料でそれができるのです。

そうやってたくさんの人が見てくれて再生回数が増えてくると、自店の商品の動画が検索上位に上がってきます。それによってさらに再生回数が増え、同じ商品を扱う他社や大手が上げている動画を追い抜くことも可能です。

特に今はコロナ禍で外に出られないからYouTubeを視聴する人の全体数が増えています。タレントが自分でYouTubeを始める例を見てもこれからもっと視聴者が増えるでしょう。始める上でまたとないチャンスです。

「中小店では無理」という思い込みを捨てよう

皆さんはもしかしたら、「型番商品は大手を含めた競合他社の価格競争力に勝てないから不利」と思っているかもしれません。それはよくある思い込み。実際は、その型番商品が高価格帯であれば、ECでは中小店でも案外売れます。

競合他社は一つの商品で年間何万台も売ろうとして、Amazonや楽天にも出品します。一方中小店は一つの商品は100台〜1000台も売れれば十分。YouTubeを使って売れば手数料がないので販売価格を安くできます。

もう一つの思い込みで、「ECはスピードが絶対だから在庫販売で即発送しないといけない」というのがありますが、型番商品の高価格帯なら注文販売でも十分対応できます。

面白いもので、動画で接客を続けていると、お客さま(=視聴者)がスタッフ(=出演者)に愛着を持ってくれます。一所懸命に説明するスタッフの姿を何回も視聴するうちに、誠実さや人間的魅力が伝わるのですね。そうするとお客さまは商品が届くまでの3日から1週間ぐらいは余裕で待ってくれるようになります。だから注文販売でも大丈夫です。

ココを押さえておくYouTube接客販売の基本

①大手チャンネルの逆をやる

では、具体的に、自店のYouTubeチャンネルを育てるコツを説明しましょう。

まず、業界の大手がやっている公式チャンネルを見つけて、登録者数でも動画投稿の数でも何でもいいので、それを追い抜く目標数値を決めます。「いつまでに」の期限も決めましょう。

そしてここからが重要ですが、ズバリ、逆張りをやってください。サトーカメラの場合は某大手カメラ店チェーンを追い抜くために、「タレントを使わない。自社のスタッフを起用」「プロのしゃべりを目指さない。素人路線で行く」「つくり込まない。ぶっつけ本番でやる」と決めました。

大手はタレントとプロのナレーターを使ってテレビCMみたいな完璧な動画をつくるのが普通ですが、それだとお店とお客さまの間に親近感が生まれません。そこに私たち中小店の勝機があります。

たどたどしくてもいいから、一所懸命に商品の魅力をアピールしましょう。商品知識はあるに越したことはありませんが、それよりも、リアルな体験談や使用感を、リアルでやっている接客のように、ダイレクトに話しましょう。その方が伝わりますし、結果的によく売れます。

②目の前に一人のお客さまがいるつもりで撮影カメラに向かう

コツの二番目。動画でもライブでも、一人のお客さまをイメージしてカメラに向かってください。こうすることで視聴者は「私に接客してくれている」と感じてくれます。これが100人を相手に接客するつもりで話そうとすると途端にニュースを読み上げるみたいになってしまうから要注意です。

ライブコマースは収録動画に比べて特にそれが分かりやすい。売るのが下手な人は、100人見ていたら100人全員に当てはまるようなことを言おうとします。すると表面的なことしかしゃべれないから、結局は誰の心にも刺さらなくて売れないのです。

リアルの店頭で接客するときは一人のお客さまと向き合いますよね。あの1対1をそのままやればいい。そうすれば必ず売れます。

なお、撮影者兼ディレクター的存在の「中の人」は必須です。1人で自撮り配信では、答えやすいリスナーのコメントを選んで拾うから、見ている側に驚きがなくなります。中の人が視聴者代表の立場で無茶ぶりも含めてコメントを拾い、出演者は何とか答えようとして頑張る。それが画面を通して伝わるから面白くなるのですよ。

③同一商品で動画を量産 用途別に撮る/複数演者で撮る

三番目のコツは「用途別に撮る」「複数の演者で撮る」こと。売るべきアイテム数がそんなに多くないお店の場合、特にこれらが有効です。

例えばカメラの場合、動画タイトルを「機種名×撮る対象」というキーワードの組み合わせにすると再生回数が伸びやすいです。「ニコンZ50で紅葉を撮る」とかですね。「モノ×コト」の掛け合わせのタイトルにすることで、同じアイテムで動画を量産できます。

一つのアイテムを複数の出演者が別々に取り上げるのもお勧めです。キャンペーン的な迫力が出るので、むしろ積極的にそうしましょう。もちろん出演者によって話す内容がかぶりそうなら事前に打ち合わせてください。

やってみるとこれも面白くて、出演者が変わると見る人も変わるのです。考えてみれば、50代の男性が接客する動画と20代の女性が接客する動画では見る人が違って当たり前。つまり、このコツは動画を量産できるのと同時に、見てくれる視聴者の幅を広げるコツでもあります。

④「人の買い物を覗く楽しみ」で生配信を盛り上げる

四つ目のコツは生配信、つまりライブコマースに関して。ライブでは「他人の買い物を覗く楽しみ」を最大限活用します。

「何時開始」という決まった時間に見に来てくれるぐらいだから、生配信の視聴者はその回のアイテムが好きな人たちです。そうすると、〝同好の士〟だから、購入した人が自分でなくても、すごくうれしいらしい。だからコメントに「買いました!」「買います!」と出るたびに、「誰々さんおめでとう~!」とか「ついにやりましたね!」とかで祝福の嵐が巻き起こります。

配信側は出演者と中の人とでそれらを必ず全部拾い、見ているお客さまと一緒になって、「お買い上げありがとうございます!」と祝福しましょう。そうやって場を温めると売り上げが伸びます。

⑤生配信は夜9時以降に 進行はグダグダでもOK

ライブは夜9時に配信を始めます。最近は緊急事態宣言の影響で少し早まった感じもありますが、夕食を食べて子どもを寝かしつけて、洗い物も終わって、ビールでも飲みながら一息つく時間が大体9時。だからここで始めると見てもらいやすい。

ちなみに進行はグダグダでも構いません。むしろ段取りが悪くてグダグダになるくらいの方がお客さまは親近感が湧きます。名人といわれた落語家・立川談志の有名な言葉で「素人には敵わねぇ」という有名なフレーズがあります。「プロは予定調和、素人は何が起こるか分からない、だから面白い」という意味ですが、その通りだと思いますね。

ただし、出演者の言葉遣いだけは、リアルの接客と同じく、きちんと敬語を使いましょう。進行がグダグダなのと態度がなれなれしいのとは別です。

ネットとリアルの融合に向けリアルの現場を強化しよう

無料オンラインツールでECの売り上げが伸びると、程度は人それぞれですが、「これだけECの効率が良いならリアル店舗に力を入れなくていいんじゃないか」という気がしてくると思います。

これは絶対にNGです。理由をいくつか挙げましょう。

まず一つ。お客さまは、注文はネットでしても、特に高額商品は店頭受け取りを好む方も多いです。商品についてスタッフに質問したり、初期設定をスタッフにやってもらったりできるからです。動画で愛着が湧いたスタッフに生で会えることも大きいようです。

また、外的な理由としては、「何でもかんでも宅配させるのはいかがなものか」という考えが社会で広まってきたこともあります。それよりも自分の好きなときに店に取りに行きたい。宅配の配送料も年々上がっているので、今後もこの傾向は続くはずです。

ですからリアル店舗は重要です。スタッフの実力の強化と売り場の魅力の底上げ。この2点に取り組みましょう。

売り場の魅力については、スターバックスコーヒーの「サードプレイス」という考えが参考になります。物を買う欲求以外の部分も満たされる場所。お客さま同士で誘い合って「遊びに行ける場所」という考え方です。自店がそうなっていければ理想的ですね。

ちなみに、動画はリアルの売り場でも役立ちます。つくる様子が見ていて楽しい商品は動画で売るのがお勧めだと先に述べました。例えば、私の支援先である和菓子店のどら焼きは、職人が手づくりで焼いている様子すなわち「生産工程や作業の部分」を動画に撮り、売り場でループ再生するだけでも売り上げが変わりました。モノだけ見て商品価値が分かる人は一部なので、表に見えないこだわりの部分を動画で見せたのです。これだけでも、価値がかなり伝わりやすくなります。ぜひやってみてください。

最後にBtoBについても一言。地方の中小企業は今、法人営業がチャンスです。首都圏の大企業をはじめとして、大手が軒並みリモート営業に変わっているからです。

今のうちに県内の企業をローラー作戦でリアルに回りましょう。リモート営業に勝つのはリアル営業です。地域に根差している企業ほど、「今回のことで地元の企業が一番だと気付いた」と言ってくれます。

今後は、大手企業になればなるほど、地方企業との小さな仕事はどんどん切り捨てていきます。それを根こそぎ獲っていきましょう。大手にとっては小さな仕事でも中小にとっては大きな仕事です。

地域密着の中小店や中小企業こそ、Withコロナの〝逆風〟を味方に付けてください。

「二八の法則」から脱却し、モノ=商品に回帰せよ

バブルがはじけて以来、商業の世界では「二八の法則」*が正しいとされてきました。「上位二割にいかに売るか」という視点と、「モノからコトへ」という高付加価値商法を追求してきました。

でも、もう頭打ち。コロナの影響でイベントができなくなったことも追い打ちをかけました。ここはしっかりとモノを売るべきです。

そこで頼りになるのが「単品一番商法」です。例えば私の支援先の農機販売店であれば、「小型草刈り機」という単品で市場シェアの三割を取る。そのために小型草刈り機の全価格帯の機種を売っていく。販売シェア三割を取れば店はその単品の専門店と認知されます。つまり、お客さまに支持されるための基盤ができます。

これは扱う商品が何であっても同じです。お客さまの支持は有名デザイナーに店舗をデザインしてもらったから得られるのではありません。

要するに、上位二割のお客さましか相手にしないままでいると、コロナ禍も乗り切れないということです。これまでは費用対効果を考えてお客さまを上位二割に絞り込んでいただけなのですから、ここはオンラインを使って、今まで御社が見捨てていた足元の八割ものお客さまにも、情報をお伝えしましょう。そしてあなたの店の顧客を大切に育てていきましょう。

*「上位二割の顧客で売り上げの八割を占めている」とされる法則

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