テーマ別企業事例 小さなイノベーションで大きな成果 逆境でも業績を上げる! セブンデイズホテル

新たな分野の開拓や新事業への進出は、大掛かりに考えてしまいがちだ。コロナ禍で苦境にある中小企業では大規模な事業投資は難しい。しかし、ピンチはチャンスでもある。そこで、転機を見逃さず、自社の技術やサービスを見直す“小さなイノベーション”で業績を伸ばしている企業の取り組みに迫った。

コロナ禍で始めた新展開を軸に自分たち独自のホテルを目指す

レンガづくりの外観が特徴のセブンデイズホテル

高知市中心部でセブンデイズホテルとセブンデイズプラスの2軒のビジネスホテルを経営しているCKMは、コロナ禍により宿泊客が激減する中、昨年8月から新たな取り組みを開始した。そこでは、収益を上げるためだけでなく、自ら高知県の魅力を再発見し、それを県内外に発信していくことで、観光地としての高知県をアピールし、ホテルの知名度アップも狙っている。そしてコロナ後を見据え、来年3月に始める新たな展開の準備も進めている。

コロナ禍でキャンセル続出 新たな企画を考え始める

JR高知駅から徒歩10分ほどのところにあるセブンデイズホテルは、もともとはビジネスホテルのチェーン店として2000年に創業した。そして、その3年後にはチェーンから離れ、セブンデイズホテルとして独自のビジネスホテルに生まれ変わった。

「以前はガソリンスタンドを経営していましたが、規制緩和で若い世代が継ぐには厳しい時代が来るので、立地の良さを生かしてビジネスホテルを始めました。全く関係のない業種からの参加でしたので最初はホテルチェーンに加盟しましたが、近くにもう一軒のホテルを建てるのを機に独立しました。誰でも泊まれる料金のホテルで、日常を大切にする豊かさをコンセプトに、セブンデイズホテルと名付けました」と、ホテルのオーナーで常務取締役を務める川上絹子さんは経緯を振り返る。

ビジネスホテルでありながら、館内はアートやデザインの要素がふんだんに盛り込まれた明るくモダンなつくりになっている。それでいて宿泊料金はリーズナブルなことから、ビジネス客だけでなく、若い観光客のリピーターも多かった。そのため稼働率は毎日80%を超え、特に土曜日はほぼ満室という状況が続いていた。08年のリーマン・ショックで一時期落ち込んだものの、また以前の状態を取り戻し、再び順調な経営を続けていた中、コロナ禍に見舞われた。

「予約がぎっしり入っていたのにキャンセル続出で、昨年の3月半ばからガクッと落ち、4月にはドンと落ちました。まさに頂点から落ちるような感じでした。いつもの90%減で、6、7月の時点で最悪の状況だったので、これはなんとかしないといけないと思い、新たな企画を考え始めたのです」

気持ちがふさがないよう何か楽しいことをしよう

新たな企画の一つが、昨年8月から毎月1回開催している「瞑想(めいそう)&写経ミニ体験ツアー」で、これは、お遍路の第三十一番札所である竹林寺で約2時間、瞑想や写経、住職の話を聞かせてもらう体験型のプランとなっている。

「県外に出にくい時期だったので、県内の人たち向けに、お寺で非日常を味わってもらえる体験ツアーができないかと、市内にある竹林寺のご住職に相談したことから始まりました。観光客が少ない時期なので反響が大きかったわけではありませんが、参加者には喜んでいただき、リピーターも増えています」と、絹子さんの息子で、2年前に社長の座を受け継いだ川上圭介さんは言う。

それと同時期に、ホテル裏にあるスペースで「オープンデイ」の月1回の開催を始めた。これは、高知県で農産物や加工品など飲食にこだわる生産者たちが集まり、農産物の販売や料理を提供するイベント。それと同時にホテル内のロビーでは、キャンドルづくりや草木染めなどを体験できるワークショップも開催している。

「コロナで気持ちがふさがないよう、何か楽しいことをしようと、高知で面白いことをしている人たちが集まって小さなマーケットを開く感じです。これは、地域の人たちに楽しんでもらい、うちのホテルを知ってもらうことが一番の目的です。そして、その様子をインスタグラムで流すことで、県外の人たちに高知の魅力を知ってもらい、いつかは行ってみたい、セブンデイズホテルに泊まりたいと思ってもらえたらうれしいです」と絹子さんは笑顔を見せる。

そして、このオープンデイで知り合った農家の人たちのこだわりを県外の人にも伝えたいとの思いから、また新たな企画が始まった。

高知のこだわりの農産物を県外の人たちに届ける

「GoToトラベルで持ち直したら、去年12月にまた落ち込み、こちらから県外に何か発信できないかと考えたのが物販で、今年4月から開始しました」(圭介さん)

それが、高知のこだわり生産者の農産物や加工品を箱に詰めて送る「Laatikko」(ラーティッコ)。これは暮らしを大切にする北欧フィンランドの言葉で、「箱」を意味する。

「毎回売り切れで、30%はリピーターです。県内でも手に入りにくいものばかりなので、1回に100箱しか販売できません。利益はそれほどでもありませんが、お客さまは全国に散らばっているので、観光が再開したときに、これが最大の広告宣伝につながると思っています」と、絹子さんは期待に胸を膨らませる。

そして、このような高知のこだわり生産品を販売するミニショップを、ホテルのロビーを改装して設ける計画も進行中である。

「今後はビジネス出張者が減ることが予想されます。そこでコロナ後を見据え、市場で買った食材やうちのショップで購入した食品を宿泊客が自分で調理して食べられるよう、2階のワンフロアを改装して、長期滞在やファミリー向けにキッチン付きの客室をつくります。12月から工事を始め、来年3月にはショップとともに開始予定です。そして、ビジネスホテルという概念を取り払った、自分たちにしかできないホテルにしていきたい」と圭介さんは今後の展望を語る。

これまでにやってきたことは、コロナ禍がなかったら考えもしないことだったと二人は言う。それがホテルの新たな展開につながった。災い転じて福となす。来年3月からの新展開が楽しみである。

会社データ

社名:株式会社CKM

所在地:高知県高知市はりまや町2-13-17

電話:088-882-2437

HP:https://7dayshotel.com/

代表者:川上圭介 代表取締役

従業員:43人(パート含む)

【高知商工会議所】

※月刊石垣2021年12月号に掲載された記事です。

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