コラム石垣 2021年12月11日号 神田玲子

先日、久しぶりに友人と会った。先の衆議院選挙について「成長と分配ということだけれど、今更何を言っているのか」と首をかしげた。確かに、成長や分配が、政府が国民生活を向上させる上で重要であることは今に始まったことではない。今更、争点とする理由はどこにあるのか。

▼そもそも「今」とは何か。故大平正芳総理は、未来につながる「永遠の今」という言葉を好んだという。「現在は、未来と過去との二つの相反した方向に働く力の相克の上にある」(『いのちの政治学』より)。「今」は、過去の強い影響を受けると同時に未来からも大きな力で引っ張られる。「今」という時間は、過去や未来との因果で成り立つものだと考える。

▼現在の分配政策は、抜本的な見直しを先送りしてきた過去の蓄積だ。時代が変化しているにもかかわらず古くなった制度に手を付けず、継ぎはぎの微修正にとどめてきた。それを省みることなく「分配」と主張しても説得力に欠ける。国民が納得する釈明が必要だ。

▼未来に対してはどうか。産業革命後の世界のように、技術進歩に任せていれば社会が豊かになる時代では、もはやなくなった。地球の自然、大気、資源へのマイナスの影響を排除しなければ、人類の存続も危うい時代へと転換している。さらにデジタル化、グローバル化の流れは止まらない。これらの変化がもたらす課題が新たな政策によって解決可能であることを示さなければなるまい。

▼政策は過去と未来に立った目線で捉えなければならない。過去からの影響を受けつつ永遠につながる「今」を問うことで、現在を生きる人々に政策の必然性が伝わるに違いない。それこそが「今」の政治に期待されることである。 (NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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