公益財団法人全国中小企業振興機関協会はこのほど、「ポストコロナ時代における規模別・業種別に見た中小企業の経営課題に関する調査結果」を公表した。同調査は、7月12日から8月31日まで、2万社を対象としたアンケート(回収数2801社)と11社(団体)へのヒアリングを実施したもの。前回(2015年)調査と比較しながら、新型コロナウイルス感染症の影響下における「デジタル」「サステナビリティ(持続可能性)」「事業承継、働き方など」に関する中小企業の取り組み状況と課題について取りまとめた。
同調査によると、中小企業が「重視する経営課題」は「販路の確保」「人材確保」「人材育成」の順で前回と大きく変わらないが、今回は「新商品・サービスの開発」「コスト低減」「借り入れ依存度の低減」の重要度が高まっており、コロナ禍における新たなニーズや財務状況の悪化への対応の表れとみられる。
また、「生産性向上」の取り組みの実施割合は減少したが、取り組んだ企業のうち成果を出した企業の割合は上昇。デジタル化については、ITツールなどの導入は前回調査より進んだものの、「限定的な活用」「ほとんど利活用されていない」とする企業が多かった。取り組みが進んだ業種は卸売業や情報通信業で、企業規模では規模が小さいほどデジタル化の取り組みが遅れている傾向が見られた。その理由としては「アナログな企業文化」が課題とする割合が最も高く、デジタル化を進めるには、企業文化の改善が必要としている。
サステナビリティ対応に関する取り組み状況では、特にSDGsについては全体の70%以上が認知。既に取り組んでいる企業の割合はどの業種も10%未満にとどまったが、「今後取り組むことを検討している」企業の割合は、卸売業、情報通信業、製造業において20%を超えている。
そのほか雇用・労働分野では、コロナ禍を機にテレワークや時差出勤などに取り組む企業が増加した。事業承継については、特に宿泊業や飲食以外の小売業で「廃業するつもり」とする企業の割合が増加した。
調査結果から、デジタル化においては「費用面だけでなくデジタル教育に重点を置いた支援」など、サステナビリティ対応については「重要性やメリットに関する啓発活動や情報発信」など、雇用・労働分野では「経営者の意識啓発」「サプライチェーン全体での工期・納期や費用の見直しの支援」などを行う必要があると分析している。
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