最近、人工知能による映像技術の進歩には目を見張るものがある。コンピューターに自分の写真、手紙など過去に書いたもの、ツイッターに投稿したつぶやきなどの情報を読み込ませて自分とそっくりのデジタルクローン(デジクロ)がつくれる。
▼このデジクロを立体的に記録・再生させたホログラムは他人から話し掛けられた場合に、あたかも自分が返事をするかのように完璧に対応してくれる。近い将来、このデジクロが巨大な仮想空間「メタバース」の世界で、自分に代わって仕事をしてくれるかもしれない。そのような場合に、デジクロの法的位置付けやそのデジクロによって引き起こされた事案に対してどこまで自分が責任を負うべきか。
▼現在、インターネットの世界ではフェイクニュースが氾濫しており大きな問題になっている。かつてナチスの宣伝相のゲッペレスが「うそも100回続けて言えば真実になる」とうそぶいた。悪意のある政治的なフェイクニュースが飛び交っている世の中は健全な民主主義社会とはいえない。
▼この典型的な事例は米国のトランプ氏が大統領に選出された5年前の大統領選挙である。この時、トランプ氏を当選させたいロシアがマケドニアの若者などを使って、対立候補のヒラリー・クリントン氏に不利な大量のフェイクニュースを米国国民にばらまいた。
▼このような動きはこれからさらに巧妙になりそうだ。デジクロと同じだがディープフェイクといって人工知能で実在の有名人のそっくりさんを合成し、彼らに自分たちに都合の良いプロパガンダをしゃべらせて世論を操作・誘導しそうだ。これから各個人はフェイクをどのように見分けていくか、メディアリテラシーが問われそうだ。 (政治経済社会研究所代表・中山文麿)
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