日本商工会議所の三村明夫会頭は3月16日、定例の記者会見で、今年の春季労使交渉について、「賃上げできる環境にある企業が賃上げする風潮が広がることは喜ばしい」と述べた上で、人流で成り立っている宿泊・飲食業など全体の3割程度の中小企業など賃上げを議論する状況にない企業もあることを指摘した。中小企業が賃上げの原資を確保するためには、「取引価格の適正化が不可欠だ」と強調。「大企業においても、パートナーシップ構築宣言の趣旨を踏まえ、取引価格の適正化に向けた交渉に応じてほしい」と要望した。
三村会頭は、今年の春季労使交渉の集中回答日に、自動車や鉄鋼・電機など大手各社で高水準の回答が続いていることについて、「収益を上げ、賃上げできる環境にある企業が賃上げするという風潮が広がることは喜ばしい」との考えを表明。一方で、「人流で成り立っている宿泊・飲食業など全体の3割程度の中小企業では、厳しい状況が続いている」と述べ、宿泊業など業界全体が危機的な状況にあるような業種では「賃上げ自体が難しい」と指摘した。
中小企業が賃上げの原資を確保するためには、「取引価格の適正化が不可欠だ」と強調。「パートナーシップ構築宣言」の登録企業数が6500社を超えるなど、中小企業の円滑な価格転嫁に向けた官民の取り組みに触れ、「大企業においても、パートナーシップ構築宣言の趣旨を踏まえて、ぜひとも取引価格の適正化に向けた交渉に応じてほしい」と要望した。
今年の春季労使交渉で労使の意見の隔たりが小さくなっているのではないかという記者の質問に対しては、「良い傾向だ。端的に言えば、労使の現状認識が一致しているということではないか」と指摘。「春季労使交渉は、労使が現状認識をすり合わせ、あるいは将来に対する考え方を話し合う場だ」と述べ、スムーズな労使交渉や早期妥結に関しては、「結構なことだ」との見方を示した。
政府からの賃上げを求める声については、「賃上げは、企業の経営思想に基づいて実施するものであり、政府の要請があったからといって企業一律で実施するものではない」と指摘。「各社の事情に応じて判断すべきことだ」と強調した。
また、取引価格適正化を実現に向けて実施している「価格交渉促進月間」などの取り組みを評価。パートナーシップ構築宣言の実効性確保と同時に、4月に中小企業庁が実施する価格交渉の実態調査、下請けGメンによるヒアリングなどの調査結果やデータなどを具体的・客観的に示していくことが不可欠との認識を示した。
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