日本商工会議所の三村明夫会頭は1日、東京商工会議所の夏期セミナー後に記者団の取材に応じ、同日、発表された日銀短観の結果について、自身の実感に近いとの感触を示すとともに、「足元のリスクは、原材料価格高騰や世界経済減速の影響にシフトしている」との見方を示した。大企業製造業のDI悪化については「敏感に反応した」と指摘。今後、大企業の非製造業と中小企業に影響が及ぶことに懸念を表明した。
三村会頭は、日銀短観で、大企業製造業の業況DIが2四半期連続で悪化した一方で、大企業非製造業では新型コロナウイルスの感染状況の落ち着きを背景に、2期ぶりに改善した点について、「私自身の実感と整合的だ」との見方を示すとともに、最新の日商LOBO調査結果に触れ、「コロナの影響の深刻度は、徐々に和らいできている」と述べた。日銀短観においても、コロナ禍の影響よりも、原材料価格高騰などの影響のほうが大きくなっていると指摘。今回の調査結果では、改善または横ばいだった大企業の非製造業や中小企業については、「影響が及ぶのはこれからではないか」と述べ、懸念を示した。
ロシアのプーチン大統領が6月30日に、日系企業の参画する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営会社の資産をロシア側が新設する法人に無償譲渡する大統領令に署名したことについては、「報道は承知しているが、率直に言って信じられない」と述べるとともに「これまでの契約を反故にしてでも権益を奪おうとすることは、短期的には何らかのプラスがあるかもしれないが、将来ロシアへ投資する民間企業がいなくなることを考えれば、長期的にはロシアは大きなマイナスを負うことになる」と指摘。「日本への揺さぶりなのか、実際に権益を奪おうとしているのか本当の意図は分からない」との見方を示した。
政府や商社などの今後の対応については、「難しい対応を迫られると思うが、詳細が分からないので何とも申し上げられない」と述べるとともに、政府が日本企業の権益の扱いや、日本のLNG輸入への影響について「現在精査中」と回答していることに触れ、「あまり大騒ぎせず、冷静に状況を見守り、対応すべきだと思う」と述べた。
6月24日に、来日中の大韓商工会議所崔泰源会長と都内で懇談したことについては、「崔会長からは、今まで途絶えていた韓国と日本の経済交流を再開させてほしいという話があった」と説明。「今後、日韓の関係が正常化されることを願っている」との考えを表明した。
3年ぶりにリアルで開催した東商の夏期セミナーについては、デジタル化対応、円安によるコスト上昇の影響、輸出に挑戦するためのEC活用などさまざまな経営課題について意見交換したことに触れ、「これほど多岐にわたる問題が討議されたことはこれまでなかった」と指摘。「コロナ禍に経験した苦労話や現在真剣に悩んでいる課題などを率直に意見交換し、多くの参加者にとって有意義なセミナーとなった」と評価した。
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