「廃用症候群」をご存じですか。加齢や病気などで身体活動が低下したり、過度の安静によって生じたりする心身のさまざまな状態や症状を指します。
例えば、足を骨折して長期間ベッドでの生活を余儀なくされた後、すぐに起き上がれない、手足の動きがギクシャクするということがあります。これは体を動かさなかったことで、筋力の低下や関節が拘縮(こうしゅく)したことによるものです。実際、安静の状態が続いて筋肉の伸び縮みが行われないと、1週間で10~15%の筋力低下が起こるといわれています。筋力が低下すれば体を動かすことが面倒になり、ますます身体活動が低下するという悪循環に陥ります。
廃用症候群は年齢を重ねるほどリスクは高まりますが、病気やけがの治療などで長期間の安静が続けば、誰にでも起こり得ます。一度この状態に陥ると、元の状態まで改善させるのは容易ではありません。そのため、年齢にかかわらず予防が重要となります。
やはりポイントは運動習慣です。まずは歩数計やスマホのアプリなどを利用してよく歩くようにしましょう。仕事先から少し回り道をして帰る、階段を使う、近くの買い物は歩いて行く、家族と散歩に出かけるなどを心掛けてみましょう。
毎日のルーティンとしてラジオ体操を行ったり、動画を見ながらストレッチやヨガをしたりするのもおすすめです。最初はおっくうに感じても、体を伸ばすと気分がシャキッとして、楽しみながら取り組めるようになります。
また、日々の生活に張り合いを持たせることも大切です。身体機能が低下するとメンタル不調も起こりやすくなります。それを回避するためにも、人と関わる機会を設けましょう。家族や友人とおしゃべりを楽しむ、趣味のサークルやコミュニティーに参加するなども方法の一つです。
もし、長期間の安静により、関節の可動域が狭くなるなどの違和感を覚えたときは、早めにリハビリテーション科を受診して、適切な治療を行いましょう。
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