「わが国の未来は子どもにかかっています」
こう語ったのは岸田文雄内閣総理大臣。昨年12月、臨時国会会期末の記者会見でのことだ。
妊婦や子育て家庭への10万円相当の経済的支援の継続、出産育児一時金を現行42万円から50万円へ過去最高となる増額、今年4月に発足するこども家庭庁の下での政府総力を挙げての「こどもまんなか」社会の実現を目指すことを宣言した。
総理の発言の背景には、日本の未来を担う子どもの出生数が減り続けている現実がある。
13年連続人口減 縮小する日本経済
大手シンクタンク「日本総合研究所」の昨年11月の発表によると、2022年の日本人の出生数は前年比マイナス5・1%減の77万人前後となり、初めて80万人を下回る見通しという。国の予測よりも8年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいることになる。16年以降、出生数は年率マイナス3・5%のペースで減少してきたが、昨年はそれを上回る減少率となった模様だ。出生数の減少は人口減に直結する。
政府によると、昨年1月1日現在の日本人の総人口は1億2322万3561人で、13年連続の減少。総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合(高齢化率)は、1950年(4・9%)以降一貫して上昇が続いており、1985年に10%、2005年に20%を超え、昨年は29・1%となった。2065年には38・4%に達して、国民の約2・6人に1人が高齢者となる社会が到来すると推計されている。
一方、世界の人口は増え続けている。国連によると、昨年11月15日には80億人を突破。2030年に約85億人、2050年には97億人に増え、2080年代中頃に約104億人でピークに達し、2100年までそのレベルにとどまると予測されている。食料や水、エネルギーなど資源に限りがある中で、果たして地球は人口増加に耐え続けられるのだろうか。
このとき日本の社会と経済がどうなっているかを、そしてどうしたいかを考えることは、2023年の商業動向を考えることと無縁ではない。なぜなら、商売とは今日だけのものではないからだ。永遠のもの、未来のものと考えてこそ本当の商人である。商人には、今日よりも良い未来をつくる務めがある。
今日よりも良い未来をつくる
少子化に歯止めがかからないと、日本の人口は2100年には約6400万人から約4600万人にまで減少すると予測されている。日本は歴史上、これほど急激かつ不可逆的な人口減少を経験したことはない。
もちろん、かつて日本にも人口が5000万人程度の時代はあった。明治期である。しかし、人口増加の上り坂にあった明治期の高齢化率は5%であり、人口急減の下り坂に立つ私たちのそれは40%に届こうとしている。すでに私たちは、人口オーナス期を生きているのだ。
これは、子どもと高齢者に比べて労働力人口が少ない状態をいい、労働者の減少により消費は低迷し、1人当たりの社会保障負担が増すことから経済成長は阻害される。こうした傾向は今後さらに加速する。本稿では三つの提案をしたい。
第1に、これまでの常識はもはや通用しない前提に立つことだ。前世紀に通用したビジネスの成功法則は、もはや成功を保証するものではない。私たちは今、人類史上例のない環境下に置かれ、これまでの正解が消失した時代の中で事業に向き合っている。
第2に、変化を恐れないことだ。ダーウィンの進化論を持ち出すまでもなく、生き残るのは、強い者でも、賢い者でもなく、変化する者である。変化に漫然と巻き込まれるのではなく、自らを変革することだ。
第3に、昨日よりプラス1%の努力を続けることだ。「1・01と0・99の法則」をご存じだろうか。それぞれを365乗したときの差の大きさから、努力の大切さを説いている。法則の真偽は別として、マイナス1%の怠惰は無論、変化の著しい時代にあっては何もしないことは後退を意味する。
このとき重要なのは、努力する方向である。それはすなわち、今日よりも良い未来をつくろうとする意志にほかならない。
最新号を紙面で読める!