日本商工会議所の小林健会頭は1月20日、定例の記者会見で中小企業の賃上げ実施企業が増えていることについて、「良いことだが、その多くは防衛的な賃上げに迫られている事実も見過ごせない」と指摘。「問題なのは持続性だ。賃金上昇のスパイラルに入るためには、企業の生産性向上も重要だが、取引価格の適正化が何よりも大切だ」と述べた。その上で、経済3団体連名で発出した要請書「パートナーシップ構築宣言の実効性向上に向けて」に触れ、「今後は、取引適正化に向けた行動をさらに深化させる」との考えを表明した。
小林会頭は、中小企業の賃上げについて、「多くの企業が賃上げできるようになることを期待している。賃上げできる企業はぜひ賃上げしていただきたい」と述べるとともに、持続的な賃上げが可能となるためには、「企業の生産性向上も重要だが、取引価格の適正化が何よりも大切だ」と指摘。また、小林会頭の発議により1月13日に経済3団体連名で取りまとめた会員企業向け要請書「パートナーシップ構築宣言の実効性向上について」に触れ、「今後は、取引適正化に向けた行動をさらに深化させる」と述べた。
中小企業自身の取り組みについては、「BtoC企業には、勇気を持って価格転嫁を進めてほしいし、大企業のサプライチェーンの中の中小企業は、発注先に対して価格協議をお願いしてほしい」と要望。また、大企業に対しては「下請企業にコストカットを強いて、サプライチェーンの中で自社だけが利益を上げることは許されない」と強調し、「受注側企業、下請企業のコスト上昇分について、積極的に価格協議に応じるとともに、取引の対価として円滑に反映することが求められる」との考えを示した。
岸田首相が表明した「異次元の少子化対策」については、「社会全体・国民全体の問題であり、長期的視点の下で取り組まなければならない国家的課題だ」と強調。「大切なことは、多くの方が労働市場に参加して収入を得ること、非正規労働者も家庭を持ち、子どもを育てられるような安定的な収入が得られ、さらには、非正規から正規雇用へ移動できるような環境をつくっていくことだ」と述べ、政府や企業が働きながら子育てする労働者を支援することの重要性などを指摘した。
今国会における議論については、「少子化問題だけでなく、防衛、安全保障、エネルギー政策といった国家的な課題に岸田首相が取り組もうとしていることは評価したい」との考えを表明。「党利党略や政局にせず、正面からの議論を期待したい」と述べた。
新型コロナの感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で政府内の検討が始まることについては、「率直に申し上げて『わが意を得たり』だ。以前からコロナと共生し、社会経済活動を正常化することが最大の経済対策と申し上げてきた」と全面的に支持する考えを表明。加えて、「なるべく早く検討をお願いしたい。並行して、以前より問題になっている医療体制の整備にも取り組んでほしい」と述べた。
公的負担の問題については、「経過措置として当面は継続し、段階的に通常の保険診療に移行していただきたい。インフルエンザと同様の5類に移行することである程度は国民の納得は得られる」との見方を表明。「政府は国民は冷静に対応してくれると信頼して検討すべき」と述べた。
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