東日本大震災から11年10カ月が経過し、被災地の復興は着実に前進しています。その背景には国において、令和3年度から7年度までの5年間を「第2期復興・創生期間」と位置付け、円滑かつ着実な復興に向け各種の取り組みを進めてきたことがあると受け止めております。
そのような中、原子力災害被災地域では福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業振興に、地震・津波被災地域では国際リニアコライダー計画の推進や次世代放射光施設の利活用促進に、そして、全域で交流人口や特定の地域に継続的に多様な形で関わる関係人口の創出などに積極的かつ創造的に取り組んでいるところです。
一方、長期化するコロナ禍に加え、混迷するウクライナ情勢やエネルギー価格の高騰、急速な円安、頻発する自然災害などの複合的な要因が絡み合い、被災事業者は事業存続にも関わる厳しい経営を強いられています。さらに、高度化融資などの償還や産業復興機構・再生支援機構による買い取り債権の買い戻し時期を迎えています。このため、販路の回復が当初の事業再建計画通りに進まない被災事業者にとっては、原油・原材料・エネルギー価格の高騰とも相まって、事業継続に支障を来すことが懸念されます。
ついては、制度の緩和や柔軟な対応など、事業者の実情に応じたきめ細かな支援を強く要望いたします。
また、被災地域では、おかげさまで交通インフラの整備が飛躍的に進みましたが、今後はこれをいかに産業振興に結び付けるかが求められています。このため、基幹道路につながる幹線道路網・港湾などの整備による周回性の向上、高速物流・広域観光に対応した道路付属設備等の機能向上が不可欠となっています。各地の前向きな取り組みを強力に支援されるよう、お願いいたします。
ALPS処理水の海洋放出については、今もって多様な意見が表明されています。このため、沿岸部被災地区はもちろんのこと、国民、そして国際社会からの理解が得られるよう、最大限の努力を払うことが求められています。国を挙げて正しい情報の発信、周知に努められるとともに、当該地区のイメージアップ、輸出規制を行っている国々への強力な働き掛けが必要です。また、震災以降、水産業のみならず懸命に風評被害払拭に努めてきた地域産業に支障が生じないよう、風評被害に関する充分な施策を要望いたします。
創造的復興の取り組みを被災地域全体の底上げにつなげていくためにも、改めて各地域の現状と抱えている課題を明らかにし、今後も行政および関係機関に対し中長期的な対応と各種支援の着実な履行を求めるところであります。
つきましては、一日も早い復興の完遂と真の地方創生の実現に向け、下記の事項について、引き続き全力で取り組んでいただきたく、政府への働き掛けを強く要望いたします。
Ⅰ 福島の復旧・復興の加速について
(1) 原子力発電所事故の早期収束と損害賠償について
◆廃炉作業の推進、廃炉の早期実現など全6項目
(2) 風評被害・実被害を受けた地域への支援について
◆国内外における放射能と食品の安全性に関するリスクコミュニケーションの推進と本県に関する正しい情報発信の強化など全7項目
(3) 福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展について
◆福島イノベ―ション・コースト構想の推進を軸とした廃炉の推進、産業集積の促進など全9項目
Ⅱ 被災地における復興・再生の強力な推進について
1.産業・生業の再生について
(1) ALPS処理水の海洋放出と風評被害対策の徹底について
◆処理水の海洋放出に対する万全な風評被害対策の徹底など全15項目
(2) 事業者の販路回復・拡大について
◆国際競争力を備えた水産業・農業の再生など全9項目
(3) 原材料確保対策について
◆海産物の陸上養殖や野菜工場の整備支援など全3項目
(4) 被災事業者の資金繰りの円滑化と事業継続支援について
◆中小企業の資金繰りの円滑化と、二重債務の解消に向けた金融支援の創設など全9項目
(5) 労働力確保について
◆地元定住、定着促進を図るため、小中学生への地元企業紹介やインターンシップ事業など、新卒者の地元就職推進に関する支援および産業人材育成支援など、キャリア教育のさらなる普及・促進など全6項目
2.創造的復興に向けた取り組みについて
(1) 先端技術・産業集積への取り組みについて
◆国際リニアコライダー(ILC)計画の実現、関係省庁横断の連携強化など全5項目
(2) 観光の復興に向けた支援について
◆観光商品造成、地域経済循環強化、観光施設整備への支援など全10項目
(3) 雇用創出について
◆地方都市へのリビングシフト推進
3.インフラの復旧・整備について
◆JR気仙沼線・大船渡線におけるBRTなど公共交通サービスの整備・拡充など全23項目
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