日本商工会議所の小林健会頭は8日、連合の芳野友子会長と会談し、持続的な賃上げと価格転嫁の推進などについて意見交換を行った。連合との懇談は2017年以来。会談では中小企業の賃上げには取引価格適正化が不可欠との認識で一致し、価格転嫁の実現に共に取り組むことなどを確認した。
会談で日商の小林会頭は、「20年続いた物価も賃金も上がらないデフレの状況を変えていかなければならない」と強調。「そのためには、雇用の7割を占める中小企業の賃上げが重要であり、日商として、できるだけ多くの中小企業が賃上げに取り組んでほしいと考えている」と述べた。
また、昨年12月の日商の調査結果に触れ、「半数を超える中小企業が『2022年度に賃上げを行った、あるいは行う予定』と回答したが、その7割は業績の改善が伴わない防衛的賃上げである」と指摘。「これを自発的かつ持続的な賃上げに転換していくためには、生産性向上と取引価格の適正化が不可欠」との考えを示した。
取引価格の適正化に向けて取り組んでいる「パートナーシップ構築宣言」については、「今後は、その実効性を高め、実際の価格転嫁につなげる段階に入っていかなければならない」と強調。その上で、連合に対し、中小企業を含む賃上げの促 進に向け、「労働組合の立場からも取引価格の適正化に声を上げ、経営側に働きかけてほしい」と要請した。また、最低賃金については、データに基づく納得感ある審議決定を重視している立場を改めて説明した。
連合の芳野会長は、「日本全体の賃金を動かしていくには、中小企業で十分な賃上げができるかどうかにかかっている」と述べ、「労働組合の立場からも『パートナーシップ構築宣言』の拡大と実効性の向上、適正な価格転嫁の必要性を各企業に働きかけていきたい」との考えを表明。また、「地方経済と地域の雇用を支える中小企業の経営基盤を強化し、地域活性化につなげていくために、「価格転嫁の実現に向けた連携、強化が重要」との認識を示した。
会談後に行われた記者団の囲み取材で小林会頭は、中小企業の賃上げについて、「労働分配率の高い中小企業が賃上げ原資を確保するためには、生産性向上と、価格転嫁による収益性向上が不可欠で、生産性向上にはDXが有効だが、奏功するまで時間がかかるため、価格転嫁が重要だという点で、連合と意見は一致した」と説明。「価格転嫁によって消費者物価が上がると困るという意見もあるかもしれないが、そうしなければ経済の好循環は実現できない」と強調するとともに、「消費者に直面する企業には勇気を持って値上げしてほしい。話せば消費者も理解してくれる」と述べた。
「パートナーシップ構築宣言」の実効性確保に向けて1月に経済三団体連名で発出したメッセージについては「連合にもこの趣旨は理解いただいた」と述べるとともに、「賃上げの機運醸成に向けて、地方が重要だという点でも連合とは意見が一致した」と説明。今後の連合との懇談については、時期にとらわれず、必要に応じて意見交換を行う考えを表明した。
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