日本商工会議所は4月21日、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会と三団体連名の「最低賃金に関する要望~中央・地方最低賃金審議会においてデータによる明確な根拠に基づく納得感のある審議決定を~」と東京商工会議所との連名による「最低賃金に関する要望」をそれぞれ取りまとめ、公表した。24日には、日商の小山田隆労働委員長が小林洋司厚生労働審議官に要望書を手交。今年度の最低賃金の審議に向け、要望内容の実現を強く求めた。
日商の小山田労働委員長は、要望書を手交した小林審議官に対し「地方の最低賃金審議会委員から、地方の審議会では中央から示された目安額ありきで、実態を踏まえた議論がなされておらず形骸化しているとの声があった」と指摘。今年度の審議に当たっては、「昨年度の中央における決定プロセスをぜひとも地方も含めて継承し、全国で指標・データによる明確な根拠の下、納得感のある額の決定がなされるよう働きかけをお願いする」と要望した。小林審議官は、「三要素のデータに基づき労使で丁寧に議論を積み重ねて結論を導くことができるよう厚生労働省としても真摯に対応する」と述べた。
要望書では、「法に定める三要素(生計費、賃金、支払い能力)に基づき、データによる明確な根拠の下、納得感のある審議決定を」「最低賃金が目指す水準などについて政府方針を示す場合には、労使双方の代表が参加する場での議論を」「中 小企業が自発的・持続的に賃上げできる環境整備の推進を」の三点を強調。加えて、日商・東商の要望では、「企業の人手不足につながる『年収の壁』問題の解消を」「地域の経済実態に基づいたランク制の堅持を」「改定後の最低賃金に対応 するための十分な準備期間の確保を」の三点の実現も求めている。
納得感のある審議決定については、近年の審議で、政府方針ありきで実態を踏まえていないとの声が根強くあったことを指摘。中央・地方の審議会において法が定める三要素に関するデータを基に明確な根拠に基づく十分な審議を求めた。
最低賃金の水準などの政府方針の示し方については、「賃上げ実現の政策的手段として用いることは適切でない」と強調。方針決定に際しては、「労使双方の代表が参加し、意見を述べる機会を設けるべき」と要望した。
中小企業が自発的・持続的に賃上げできる環境整備の推進に向けては、政府に対し、デジタル活用や働き方改革の推進など生産性向上の支援とともに、取引適正化に向けた「パートナーシップ構築宣言」の拡大と実効性向上に向けた取り組みなどを要望。新たな助成制度創設も含め、中小企業の賃上げを後押しする制度の拡充を求めている。
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