言葉足らずはトラブルや誤解のもととなってしまうので、ビジネスに身を置く者として気を付けないといけません。社会に新人があふれるこの季節、大人の心得として伝えたいことはたくさんありますが、相手を思いやる言葉を身に付けてもらいたいと思っています。
例えば「すみません、少し遅れます」という連絡は、明らかに言葉足らずです。「少し」や「もうすぐ」、「ちょっと」などというあいまいな表現は相手への思いやりが欠落しています。「申し訳ありません。10分ほど遅れます」や「道が混んでいますので、予定を30分遅らせてください」など、遅刻するかもしれない事象が起きた時点で、具体的な数字で伝える。これが大人の作法です。
なぜなら、5分遅れるのと30分遅れるのでは相手の時間の使い方が変わるからです。30分遅れるならその間にできる作業や仕事がありますが、5分遅れるのならそのまま待ちながら、せいぜいスマホのチェックくらいしかできません。
私は講演に呼ばれた場合、会場には30分前に着きたいと思っています。というのは、大きなセミナーの場合、担当者は数人いて、入り口で待っている人、控え室への案内やお茶などの手配、講演の進行と、出番の声掛けなどを分担して行っています。スムーズな進行のために、彼らは連携を取って、講師全員の到着と出番まで、どこで何をしているかを把握していないといけないのです。私が早めに着くだけで、彼らの心配は一つ減るのです。
ある時、私の前に講演する講師がなかなか来なくて、担当者たちがピリピリしていることがありました。そこへ、ギリギリに到着した講師は、「私は遅れませんよ。早めに着いて近くで時間をつぶしていましたから」と言うのです。
私は内心「それならば、電話を入れて担当者に教えておけばいいじゃないか。たった一本の電話でどれほど安心させてあげられるか、考えないのか!」と、思いました。自社の社員だったら、教育したところです。
遅刻にかかわらず、納期が遅れる場合なども同じ考え方です。「申し訳ありません。今日、搬入予定の品物を、明日の午前中に変更してもよろしいでしょうか?」などという具体的な表現を使うことで、次の段取り調整がしやすくなったり、時間を有効に使えたりと、迷惑を最小限に抑えることができるのです。
もちろん、約束を守ることが大原則ですが、不可抗力があることは誰もが分かっている事です。その時、相手をどのように気遣えるか、言葉次第でその人が分かります。皆さんの職場でも、一度点検が必要ではないでしょうか。
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