経済産業省はこのほど、産業構造審議会の通商貿易分科会不公正貿易政策・措置調査小委員会が取りまとめた「2023年版不公正貿易報告書」と「経済産業省の取り組み方針」を決定した。報告書は、WTO協定などの国際ルールとの整合性に懸念がある主要国の貿易政策・措置を指摘し、その改善を促すため、1992年以来、毎年公表しているもの。不公正貿易報告書の公表を受け、非市場的措置、経済的威圧、WTO上級委員会問題などのシステミックな問題への対応に加え、今後、経産省が優先的に取り組む個別の措置への対応方針を記載した「経済産業省の取り組み方針」も併せて公表した。
白書は、3部構成で、第Ⅰ部でWTO協定などの国際ルールに基づき問題点を指摘するとともに、第Ⅱ部でWTO協定と主要ケースについて解説し、第Ⅲ部では、TPP協定などわが国の主要な経済連携協定などについて掲載。第Ⅰ部では、22年7月の中国の政府調達法改正、23年5月のEU・英国における炭素国境調整措置、22年5月のカナダの特定有害物質禁止規則など、具体的な問題点や、問題となる可能性を指摘している。
第Ⅱ部では、「国産化と技術獲得」「経済的威圧」などの解説に加え、WTO改革の重要課題である「WTO上級委員会を巡る問題」などについてさらに掘り下げて分析。「経済的威圧」については、今年5月のG7広島サミットにおいて「経済的威圧への対応のための連携を強化し、G7を超えた同志国との協力も推進することを確認」したことなどを明記した。
経産省の取り組み方針では、23年度の優先取り組み案件を提示。措置の制度設計や運用について特に注視が必要なものとして、中国の「政府調達法」と「事務機器に関する国家標準案」を追加したほか、「WTO紛争解決手続を開始したもの」「WTO紛争解決手続きの開始も視野に二国間・多国間協議を通じて問題解決を図るもの」など個別の案件を列挙した。
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