地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
魚肉のすり身を成形し、加熱してつくる「蒲鉾(かまぼこ)」。その起源は古く、平安時代にさかのぼると言われています。昔は、竹の棒に材料を筒状に巻いて、つくられていました。その姿が蒲(がま)という植物の穂に似ていることから、「蒲鉾」と呼ばれるようになったと言われています(*)。
その代表の一つが、100年フードに認定された小田原蒲鉾です。食材には主に白身魚のグチ(イシモチ)が使われます。味付けしてよく練った魚のすり身を木の板に盛り付けて、蒸しあげるのです。すり身にする前に何度も水にさらし、不純物や油分を取り除くことで、きめ細かく弾力のある食感になります。
小田原では、室町時代にはすでに蒲鉾がつくられていました。生産が盛んになるのは江戸時代後期です。相模湾が近く魚がよく取れたこと、箱根丹沢山系のミネラル豊富な水に恵まれたことなどが背景にあり、東海道の宿場町で多くの人々が行き交う場所であったことから、広く知られるようになったと言われています。関西地方では焼き蒲鉾が主流ですが、小田原では、江戸好みの蒸し蒲鉾が主流です。
市内の蒲鉾業者が加盟する「小田原蒲鉾協同組合」(現在11社)では、製法や原料について「小田原蒲鉾十か条」を制定し、伝統・技術の継承と普及に努めています。また、例年3月下旬には小田原城址公園で「小田原かまぼこ桜まつり」が開催され、蒲鉾の手づくり実演などが行われています。
小田原は、北条の時代から茶の湯、和菓子、新鮮な相模湾の魚などの食文化が豊かです。昨年からは、その食の魅力を広めていく「美食のまち」プロジェクトも始まりました。小田原の食文化、これからもさらに磨きがかかるものと期待しています。
*出典 : 清水亘、「かまぼこ今昔」『調理科学』より
100年フード
文化庁は、①地域の風土や歴史の中で創意工夫し地域に根差したストーリーを持つ②世代を超えて受け継がれてきた③地域の誇りとして100年を超えて継承することを宣言する団体が存在する、食文化を「100年フード」として認定しています。
100年フード公式ウェブサイト ▶ https://foodculture2021.go.jp/jirei/
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