地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化「100年フード」の中から、日本が誇る食文化を文化庁、有識者がリレー形式で紹介します。
令和4年度、「100年フード」有識者特別賞の一つに選ばれた「五平餅」。中部地方の観光地や高速道路のサービスエリアでもよく出合える身近な郷土の味ですから、食べた経験がある人も多いことでしょう。うるち米のご飯を平たいわらじ型にして串に刺し、味噌ダレをつけて焼いた香ばしい風味は、日本人なら誰もが懐かしく感じる味わいですね。
五平餅は、今回認定された愛知県に加えて、長野県の木曽・伊那地方や、岐阜県の東濃・飛騨地方など、周辺地域でも愛されてきた中部地方の山間部に伝わる郷土料理です。その起源ははっきりしませんが、江戸時代中期にはすでにあったと考えられています。もともとは、木こりの携行食で、山仕事の安全を願う山の講の際に、神様にお供えしたものであり「御幣」の形を模したため「五平餅」と呼んだという説や、「五平」という人物がつくり方を伝えたためその名がついたという説など、地域によって由来はさまざまに語られています。いずれにせよ、かつては秋の収穫後や地域の祭りなどに五平餅をつくり、地域の皆で味わったハレの日の行事食でした。
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