日産自動車株式会社の元会長であるカルロス・ゴーン氏が、保釈中に国外逃亡してから3年が経過しました。かつては官僚体質と批判され、業績不振だった日産を生まれ変わらせ、卓越した能力の持ち主だと評価されたことがあります。リストラや合理化などの大胆な改革が取り沙汰されることが多かったのですが、ほかに注目された点、また私たちも取り入れられる手法を参考にすることで、経営者としてスキルアップにつなげたいものです。
氏が日産に持ち込んだ会議の仕方が、非常にユニークなので紹介します。部門の当事者たちは行き詰まってしまい、良いアイデアの出ない議題がある場合、その問題から遠い部署の人に集まってもらって、多種多様な意見を出してもらう、という方法を取っていたそうです。
その時の大切なポイントは、課題の前提条件を説明後、発議した人と決裁権を持った人は席を外す、ということ。会議の進行が経営幹部に影響されては元も子もありません。そして議事録には発言者の名前は明記しません。
担当者が目の前にいないと、出席者は気軽に「私ならこんなことをする」、「こうすれば良いのではないか」と、自由な発言をします。その中に、当事者には思い付かないアイデアが潜んでいる場合があるというわけです。岡目八目という言葉がありますが、部外者だからこそ、見える真実があるのです。
氏は日産に入った当時を回顧して、著書『ルネッサンス』(ダイヤモンド社)の中でこう書いています。「部門と部門、職務と職務のつながりが、見事に断ち切られていた。各部門ごとに社員は、自分たちは目標を達成しているとそれぞれに信じていた。これは日産に限らず、世界中の危機に瀕する企業に共通して見られる問題である」。
普通であれば、一方的な命令の場となりがちな会議で、各部門をつなぎ直し、共通した意識を持たせるチャンスとして、この会議の方法を取った可能性もあります。意思決定者は会議の最後に顔を出し、参加者が導き出した結論に対して「GO」か「NO GO」かを、理由や事情を説明しつつ判断を下すので、参加者は決定者の意図を理解します。
経営危機に瀕した企業のマネジャーを歴任したカルロス・ゴーン氏は、企業の経営再建に成功してきた多くの経験を持っています。「現場」の意見に耳を傾け、企業危機の本質を見つけ出し、「部門横断的なアプローチ」による問題点の洗い出しと、解決策の案出し、意識共有を考え続け、渦中対策を担ってきた経験から生まれた、会議法といえるでしょう。皆さんの組織でも実践してみてはいかがでしょうか。
お問い合わせ先
社名 : 株式会社 風土
TEL : 03-5423-2323
担当 : 髙橋
最新号を紙面で読める!