善通寺市は四国八十八箇所霊場の札所が五つあり、静寂な雰囲気と歴史が調和したこの魅力あるまちには、年間を通じて多くの参拝者や観光客が訪れている。伝統文化の継承や地域のイベントも盛んに行われており、そこで官民一体となって地元に尽力する善通寺YEGの事業とその成果に焦点を当てる。
うどんでまちの魅力を発信
善通寺YEGは「乃木うどん」復活事業を行っている。「乃木うどん」とは、鶏肉と餅が入ったうどんを指す。これは旧陸軍第11師団の初代師団長、乃木希典(まれすけ)をルーツにしたものだと、善通寺YEG山下孝太郎会長は教えてくれた。
「日露戦争時の陸軍大将として知られる乃木希典が、1898年から初代師団長を務めた善通寺の旧陸軍第11師団に乃木うどんの始まりがあります。兵士たちが好んで食べていたうどんに、餅・鶏肉を加えることで、栄養価を高めた軍食として提供されました。いつしか地元でも見られなくなっていたのですが、2014年に善通寺YEG 30周年事業として復活プロジェクトを展開しました」
今では市内13店舗で乃木うどんが提供されている。それぞれでつくり方や見た目が異なり、例えば餅は、揚げ餅もしくは焼き餅にしたり、鶏はさっぱりむね肉や天ぷらにしたりしており、各店舗のオリジナル乃木うどんを楽しむことができる。 乃木うどんのキャラクター「のぎさま」は、乃木希典元陸軍大将をモチーフにしている。「『のぎさま』は、地元の四国学院大学の学生がデザインし、公募で決定したんですよ」と山下会長はうれしそうに話した。
さらに乃木希典が、陸軍大将でありながら学習院院長を務めた経歴から、この「乃木うどん」を必勝祈願や合格祈願の勝負飯として売り出していくつもりだ。
「将来的には海軍カレーに並ぶブランドとしての地位を目指しています。提供店舗を今以上に拡大し、乃木うどんマップを載せたパンフレットを作成していきます。そこから市外・国内、さらには海外からの集客を図ることで、まちおこしにつなげたいですね」と今後の展望を語ってくれた。
善通寺YEGが取り組む地域発展への活動
善通寺YEGは、「乃木うどん」復活プロジェクトのほかにも、市内在住の還暦を迎えた人を祝う還暦式の開催や、陸上自衛隊・善通寺駐屯地の記念行事パレードへの参加、夏の一大イベント善通寺祭の共催など、地域のさまざまなイベントを支えている。
また、四国八十八箇所霊場75番札所で、弘法大師空海の誕生地としても有名な総本山・善通寺とは、同寺の400年以上続くお祭り「大会陽(だいえよう)」に善通寺YEGが発足当初から参画してきたことから縁を深め、善通寺の菅智潤大僧正がYEGのために自ら筆を取り、「YEG宣言」と「網領指針」をしたためるなど、相互で支え合いながら良好な関係を構築している。
行政との協同にも積極的だ。山下会長は「市長とのタウンミーティングでのディスカッションでは、地域の課題解決や振興策の提案として、地域おこし協力隊の方々との連携を通じたブランディングや、SNSを通じた情報発信、中心市街地の活性化などの取り組みを提案しています」と話し、さらなる善通寺の魅力発信に力を入れていく考えだ。善通寺YEGは、善通寺市発展のキーパーソンとして、行政から期待されている。
「2023年度は『地域貢献』がテーマです。地域貢献とは、ボランティアではなく、お互いの仕事につながることで地域が活性化していくこと。YEGメンバー一人一人が地域発展のために一生懸命考え行動する姿が、ひいてはメンバー企業のブランディングにつながると考えています。これからもYEGがいろいろな団体や行政との架け橋となれるよう、活動を続けていきたいですね」と山下会長は今後について話してくれた。官民一体の「チーム善通寺」を推進し、フットワークを軽くチャレンジを続ける善通寺YEGから、これからも目が離せない。
【善通寺商工会議所青年部】
会 長 山下 孝太郎
設 立 1985年
会員数 48人
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