徳川家康公生誕の地であり、大河ドラマ「どうする家康」で大きな注目を集める愛知県岡崎市。県のほぼ中央、人口約38万人のこのまちは、製造業が盛んで自動車産業をはじめとする大手企業も数多くある。関連会社も多いため、就業者の多くが同一業種に従事しており、製造業への就業率は実に約4割にも上る。地域の産業を支える中核であり、安定した経営基盤が魅力の大手企業への就職志向が強い中、岡崎YEGが地元の高校生を対象に行う「あきんど塾」は、メンバー自らが講師となり中小企業を紹介する事業だ。その狙いについて聞いた。
地域の企業を知るきっかけに
岡崎商工会議所内で開催される「あきんど塾」は、岡崎YEGの創立30周年記念事業として、「親会、行政、地域にとって必要とされる団体になる」をテーマに生まれた。製造業への就業率も高いが、離職率も3割を超えるという問題を抱える地元高校生に、大企業だけではなく、地元に多く存在する中小零細企業の魅力を知るきっかけとして、そして今後の進路決定に役立ててもらうことを目的にスタートした。岡崎YEGは、このような地域の子どもたちへの経済教育を以前から行っているという。これまでの経緯とその狙いを、事業を担当している中森那津子委員長に聞いた。 「あきんど塾を開催する前は、小学生に起業体験してもらう『ジュニアエコノミーカレッジ』や、大学生による新規事業の創造を目指す『ビジネスプランコンテスト』などを行ってきました。そして、2018年からは高校生に向けた『あきんど塾』を開催しています。 岡崎では、大企業が地元にあるため、世間の評価や勧められるまま就職したものの、仕事へのやりがいなどを見いだせずに辞めてしまうケースがあります。この傾向は特に高校を卒業して就職した場合に多く見られるようで、高校生の場合、就職に関する情報不足から自分で判断することができず、学校のあっせんや親の意見に左右されてしまうという問題があるのではないかと考えました。就職する前に地元のさまざまな仕事や経営者の考え方などを知ることで、大手企業が唯一の選択肢ではないことを知ってもらいたい。自分のやりたいことを見極めて、自分で考えて進路を決めてほしい。そんな思いがあります」
開催後、高校生に行ったアンケートでは、「それぞれの仕事の深いところを知り、違いを学ぶことができた」「自分が将来やりたいことが分かった」などうれしいコメントが並び、次回も参加したいという反響も多く聞かれたそうだ。また、産業の多様性につながるこの事業に、岡崎市も協力的ということだ。
YEGの参加メンバーからは、「高校生に自社の仕事を伝える中で新たな気づきがあった」「メンバー同士が互いの事業を深く知り合えることで、その後のビジネス連携を図れた」などの声も聞かれたという。
舞台は地元の高校へ
開催から6年目を迎える今年度は、事業名称を「あきんどゼミ」と変更し、さらなる進化を遂げていく。 「これまでは商工会議所内での開催でしたが、地元の高校での開催に変更しました。講師となるメンバーが高校へ出向くことで、部活や送迎の問題で参加できない生徒や消極的な生徒にもアプローチでき、より多くの高校生に話を聞いてもらえると考えたからです。コロナ禍への配慮から反対意見もありましたが、より真剣な思いを伝えるにはリアルが一番。すでに10月と12月に2校での開催が決定しており、参加企業のショート動画や、インターンの受け入れ整備など、より深く仕事を知ってもらう内容となっています。事業は工夫次第。無限大の可能性を信じて取り組んでいきたいと考えています」
自身の成長、自社の発展、そして豊かで住みよい地域のために
岡崎YEGは「自己研鑽」「相互啓発」「地域振興」の三つを柱として、「あきんど塾」をはじめとする事業を行っている。最後に、今年度創立35周年を迎える岡崎YEGの今後について会長の小林正和さんは、「魅力ある団体には人も集まります。地域にとってなくてはならない団体になるために、3本の柱とビジョンを掲げ、これからも活動を続けてまいります」と意気込みを語ってくれた。
【岡崎商工会議所青年部】
会 長 : 小林 正和
設 立 : 1989年
会員数 : 229人
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