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こうしてヒット商品は生まれた! 「運動会」の企画・運営

ヘアサロンチェーン・ニューロードの運動会。バブルボール着用で押し合うバブルロワイヤル、パーマをかける際に髪に器具を巻く「ワインディング」を盛り込んだ障害物競走などを行った

運動会屋は、主に企業を中心とした運動会の企画立案から運営まで請け負っている会社だ。NPO法人として発足後、2010年に会社として設立し、着実に顧客を獲得してきた。現在、年間約240件に上る運動会の開催を通じて、社内のコミュニケーションや円滑な人間関係に貢献しているほか、海外に運動会を広める活動にも力を入れている。

スポーツを通じて人と人とのつながりを取り戻したい

「日本一おもしろい運動会、私たちにやらせてください」。そんなキャッチフレーズを掲げて、主に企業向け運動会の企画・運営を行っているのが、運動会屋だ。昭和の頃は珍しくなかった社内運動会も近年はすっかり廃れてしまった感があるが、同社社長の米司隆明さんがあえて今、そこに注目したのは自身の経験によるところが大きい。

最初に就職した金融系の会社では、職場の上下関係やノルマが厳しく、1年も経たぬうちに同期の大半が退職していった。次に転職したIT企業は社内での会話がほとんどなく、「自分と他人、自分と会社」の関係についてずっと考えていたという。

「私は学生時代に野球をしていたんですが、当時コミュニケーションで悩んだことは一度もありません。チームでまとまらなければ強くなれないので、自分も主張するし、仲間の主張も聞くうちに絆が深まっていきました。そこからふと、スポーツなら人と人とのつながりを取り戻せるのでは、とひらめいたんです」

学生時代からいつか起業したいと考えていた米司さんは、2007年、スポーツを通じてコミュニケーションや人間関係を円滑にすることを目的としたNPO法人を立ち上げる。早速、当時競技人口が増えていたフットサルの大会を企画し、人を集めて開催した。

「何度かやるうちに、球技は経験者でないと参加しにくく、うまくないと楽しめないことに気付きました。誰にも経験があって気軽に参加できるものを求めて試行錯誤した結果、行き着いたのが運動会だったんです」

顧客の業種に応じて競技内容に工夫を凝らす

とはいえ、この時代に「運動会をやろう」と思ってもらうのは容易ではない。盛り上がりそうな競技企画を用意して、電話や飛び込みで営業をかけまくったが、1年目の実施件数はゼロだった。

「状況を打開しようと、2年目にHPを立ち上げました。しばらくすると、大阪のヘアサロンから問い合わせがあり、トントン拍子に話がまとまったんです。ところがいざやるとなったら、何をどうすればいいのかわかりませんでした」

思えばノウハウがない、お金がない、道具もないと、ないない尽くしだった。10日ほどしか準備期間がない中、まずは中学校時代の体育の先生を訪ねて運動会の運営について助言を乞い、競技内容を考えた。会場を探し、必要な道具は手づくりして、どうにか開催にこぎつけた。

「正直言って運営はグダグダでした。それでも大いに盛り上がって、へアサロンの方からとても感謝していただきました。これは自分の使命だと確信して、そこから5年間アルバイトをしながら資金とノウハウをためていきました」

営業の成果が徐々に表れ、実施件数は増えていった。10年には株式会社を新たに立ち上げ、事業拡大に乗り出す。満足度の高い運動会を提供しようと、業種に応じて競技内容に工夫を凝らした。例えば、建築関係の会社には丸太切り競争やコンクリート固め競争、金融機関ならお札数え競争を盛り込む、IT企業なら日ごろの運動不足を解消する競技を増やすなどだ。「参加者に楽しんでもらうのはもちろんですが、なぜ運動会をするのか、目的に合った内容である必要があります。仮に社内の人間関係を円滑にすることが目的だとして、それが縦の関係なのか横の関係なのかによっても変わってきます。そこでお客さまの要望を聞き、目的に合った競技内容や構成をご提案します」

海外にも運動会を広める取り組みを展開中

同社は開催後、相手企業にヒアリングを行っているが、今までに「つまらない」「やらなければよかった」という声は1件もないそうだ。社長や役員の意外な一面や、社員同士の普段と違う姿を見て相互理解が深まったり、共通の話題ができて会話が増えるなどの効果を実感してもらえているという。

起業から十余年が過ぎた現在、年間約240件の運動会開催をサポートしている。リピート率は実に9割に上るという。ほかにも学校や幼稚園、老人福祉施設などでの開催をしている。

さらに、15年以降は海外にも着目し、運動会という文化を広く知ってもらう活動を積極的に展開している。現在、米国やインドに子会社を設立し、主に子どもや学生向け、企業向けの運動会を開催して喜ばれている。「今では運動会がコミュニケーションや人間関係に抜群の影響力があると自信を持って言えます。次のミッションとしては、風通しの良くなった職場で社員一人ひとりがやる気を持って仕事に取り組めるような、仕組みづくりのきっかけになる運動会を企画していきたいですね」

それを具体的に実践しようと、同社は新たに「組織文化デザインチーム」を発足した。会社をさらに良くしていくツールとして運動会を活用してもらえるように、企画のさらなるブラッシュアップに取り組んでいる。運動会にどんな可能性があるのか、それで会社はどう変わり得るのか、しばらく同社の活動から目が離せそうにない。

会社データ

社名:株式会社運動会屋(うんどうかいや)

所在地:神奈川県横浜市都筑区早渕3-30-10

電話:045-590-2192

HP:https://undokai.co.jp

代表者:米司隆明 代表取締役

設立:2010年

従業員:55人

※月刊石垣2019年11月号に掲載された記事です。

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