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こうしてヒット商品は生まれた! 食べられる緩衝材

マックのポップコーン(塩味)が約45g入った「食べられる緩衝材」。店舗では扱われていないが、ネット通販サイトから5袋セットを送料込みで1080円(税込・2019年8月現在)で購入できる

珍味・豆菓子などの卸売とポップコーンの製造販売を手掛けるあぜち食品。同社ではネット販売を開始した当初から、商品を発送する際に緩衝材としてポップコーンを同梱してきたが、そのポップコーン自体が異例のヒットを飛ばしている。「ほんの洒落っ気」のつもりで始めたサービスが、SNS上で“バズった”ことで商品化され、会社の知名度アップにもつながった。

ちょっと得した気分になってもらうための“おまけ”

ネット注文して届いた荷物を開けてみたら、緩衝材としてポップコーンが入っていた―。そんな遊び心あふれる取り組みで注目を集めているのが、高知市のあぜち食品だ。透明のシンプルなパッケージには、「食べられる緩衝材」とプリントされている。中身は塩味のポップコーンで、もちろん食べられるし、美味だ。

「おつまみを買ってくださったお客さまにちょっと得した気分を味わってもらえたらと箱に入れたのがきっかけです」と同社社長の和田しほこさんは振り返る。

同社は1976年、和田さんの父親が脱サラをして始めた食品卸の会社だ。当初は乾物を扱っていたが、徐々に珍味や豆菓子など取り扱い商品を増やしていった。そんな同社を漏電による火災やゲリラ豪雨による水害が次々と襲ったが、持ち前のバイタリティーで復活を遂げてきた。

転機が訪れたのは2003年のことだ。市内でポップコーンの製造販売をしていた会社が廃業するといううわさを耳にした。

「高知でポップコーンといえば、ほんのり甘い『マックのシュガーコーン』を指します。それほど地域に浸透していて、特に中高年層にとっては映画館で必ず食べた青春の味ともいえるお菓子です。それが製造会社の廃業でなくなってしまったらもったいないと、うちが事業の継承を申し出たんです」

それからわずか2週間で工場の設備を整え、「マックのポップコーン」は同社の取り扱い商品に仲間入りした。

卸売業の不調からネット販売に活路を見出す

しかし、予想に反して当初はほとんど売れなかったという。人口減により、地域のスーパーが次々と姿を消し、映画館が減少していたためだ。和田さんは新たな活路として、2006年にネット販売に乗り出す。そして珍味やチョコレートなどの注文品を段ボールに箱詰めする際、おまけのつもりでマックのシュガーコーンを同梱した。注文してくれたことへの感謝とともに、他県の人にも高知の味を知ってほしいという思いがあった。マックのポップコーンには7種類の味があり、基本的に同梱するのはシュガーコーンだが、定期的に購入してくれるお客さまには、前回とは違う味のポップコーンを入れるなどしていた。

「ある日、それを見た知り合いから『何だか緩衝材みたいだね』って言われたんですよ。なるほど言われてみればそうだなと思いました。それを機におまけではなく、緩衝材として入れることにしたんです」

和田さんは早速、透明のパッケージに「食べられる緩衝材」と書いた手づくりシールを貼った、緩衝材用ポップコーンを新たにつくった。さらにお客さまが混乱しないように、「緩衝材として弊社でつくっているポップコーンを入れています。ご一緒にどうぞ」と書いたメモを添えて発送した。

3カ月ほどたったころ、予期せぬことが起こる。商品を注文した女子大生がポップコーンに驚いてツイッターに投稿したところ、3日間で3万8000回もリツイートされたのだ。その直後テレビにも取り上げられて注文が殺到。仕入れておいた140㎏のチョコレートがあっという間になくなる事態となった。

「驚いたのは私の方です。思いがけずこんなに注目されることになり、シールを張っただけのパッケージではみっともないなと思い始めて、専用パッケージをつくることにしました」

そうして出来上がったのが現在のパッケージで、18年12月から使い始めた。すると再びSNS上に投稿され、12万の「いいね」がつき、4万9000回リツイートされ、「おもしろい」「アイデアがある」「優しい会社」などと大反響を巻き起こした。

OEMの増加に工場の生産能力アップを思案中

それを機に同社HPへの閲覧者数は増え、ポップコーン全体の売り上げが前年対比130%の勢いで伸びているという。既存商品はもちろんのこと、100袋分のポップコーンと専用パッケージを組み合わせた「イベント用セット」のニーズも高まっている。また、和田さんのアイデアで開発した結婚式などお祝いの席で使うプチギフトも好調が続いており、卸売部門の収益が下降線をたどる中、ポップコーンの売り上げが業績を押し上げている格好だ。

「高知県産天日塩を使ったキャラメル味や淡路島玉ねぎ味など、企業からのOEM生産もたくさん舞い込むようになりました。新しい味付けには対応できますが、工場の生産能力の問題もあって、大量注文にはなかなか対応できていない状況です。設備を増強したり、人を増やすなどして生産能力をアップさせるかどうか、今後の方向性を考えているところですが、高知らしいポップコーンの味だけは絶やさないように知恵を絞っていきたい」と和田さん。

「食べられる緩衝材」は現在、ネット通販サイトから商品として購入することもできるが、あくまでも緩衝材としての活用がメインだ。しかし、この商売っ気のない商品のヒットが、同社の知名度と企業イメージを大きく押し上げたことは間違いない。

会社データ

社名:有限会社あぜち食品(あぜちしょくひん)

所在地:高知県高知市大津甲595-6

電話:088-866-5453

HP:http://azechifoods.com

代表者:和田しほこ 代表取締役

設立:1985年

従業員:17人

※月刊石垣2019年10月号に掲載された記事です。

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