Q 当社は、商品配送の効率化のため、競合メーカーとの間で、遠隔の地域に所在する卸売業者への配送を共同化することを検討しております。このような競合事業者との共同施策は、独占禁止法上の問題が生じるでしょうか。
A 競合メーカーとの共同配送については、両社が競合製品の製造販売分野において一定のシェアを占めている場合、独占禁止法2条6項の「不当な取引制限」に該当するか否かが問題となります。そして、両社製品の販売価格に占める物流の割合が大きいか小さいか、販売価格に関する情報遮断措置が取られているかどうかなどにより、当該分野における競争を実質的に制限するものか否かが判断されます。
共同配送の契機
トラックドライバー不足が指摘されています。中型・準中型免許が加わり免許が細分化され、普通自動車免許では4tトラックを運転できなくなったこと、労働時間規制の強化、労働力人口の減少、職業病につながりやすい、賃金の頭打ちなどが原因とされています。このような中で、荷主も物流会社も、効率的な輸送を実現するため、工夫を重ねています。その一つが共同配送です。
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」(物流総合効率化法)2条2号では、「流通業務総合効率化事業」が、「二以上の者が連携して、輸送、保管、荷さばき及び流通加工を一体的に行うことによる流通業務の総合化を図るとともに、輸送網の集約、効率性の高い輸送手段の選択、配送の共同化その他の輸送の合理化を行うことによる流通業務の効率化を図る事業(当該事業の用に供する特定流通業務施設の整備を行う事業を含む。)であって、物資の流通に伴う環境への負荷の低減に資するとともに、流通業務の省力化を伴うものをいう」と定義されています。つまり、異なる企業の製品・商品を一つのコンテナやトラックで輸配送する取り組みや、複数の輸配送業者が協力して集荷・配送・配達を行う仕組みのことで、低積載率の個別輸配送から、高積載率による一括輸配送を実現しようとするものです。
物流総合効率化法に基づき総合効率化計画を主務大臣に提出し、その内容が適当である旨の認定を受けた場合、税制面、補助金その他の支援を受けることができます。
独占禁止法上の問題
共同配送を行う場合には、類似の製品・商品を供給している競合事業者と組むことがあります。この場合、市場シェアによっては独占禁止法上の懸念を生じます。すなわち、一定の取引分野における競争の実質的な制限(独占禁止法2条6項)に該当するのではないか、という問題です。事例は、公正取引委員会の運用基準である「事業者等の活動に係る事前相談制度」に基づき、年度ごとに公表される「独占禁止法に関する相談事例集」においても複数見られます。
・事務用機器メーカー15社が、各地に配送拠点を設置し、当該配送拠点から需要者の指定納品場所までの事務用機器の配送を共同して行うことについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例(令和2年度相談事例集)
・化学製品メーカー2社が、商品配送の効率化のため、遠隔地域に所在する需要者への配送ルートを共同化することについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例(令和3年度相談事例集)
これらを概観すると、各社を合計した市場シェアがどの程度になるかを睨みつつも、①販売価格に占める各社の物流経費の割合(共同化割合)が小さいこと、②販売価格に関する情報遮断措置を取っていること、を理由に、独占禁止法上問題となるものではない旨の結論に至っています。従って、競合事業者と組んで共同配送を行う場合には、適切な情報遮断措置を取るなどして、一定の取引分野における競争の実質的な制限(独占禁止法2条6項)に該当しないよう留意することが肝要といえます。
(弁護士・軽部 龍太郎)
最新号を紙面で読める!