まちなかを元気にするホテル開業 多彩な企画で十勝の魅力を発信
十勝シティデザイン株式会社 代表取締役 坂口 琴美(さかぐち・ことみ)
旅行者と地元住民をつなげる存在に
私は北海道の十勝地方で生まれ育ちました。高校留学後、大学進学のために上京し、東京で飲食店を10年以上経営したことがあります。帯広市中心街の老舗ホテルが廃業したこと、空洞化が進行していることを知ったのがきっかけで、2014年に十勝シティデザイン株式会社を設立しました。離れたことで気付いた十勝の魅力を多くの人に伝え、まちににぎわいを生む事業を始めることにしたのです。
廃業した老舗ホテルをリノベーションし、16年に「ホテルヌプカ」を開業しました。ヌプカとは、アイヌ語で“原野”という意味です。自然、天候、食、文化に恵まれた十勝平野の玄関口である帯広で、宿泊設備を提供するだけでなく、旅行者に住民との交流の場を提供すること、地域情報を発信することを心掛け、さまざまな取り組みを行ってきました。
豊かな食や馬文化などを楽しく伝える
ホテルの1階には、宿泊者も地元の人も利用できるカフェバーを設けました。十勝産の食材を使用した料理や、オリジナルのクラフトビール「旅のはじまりのビール」などを提供しています。旅行者には、ビールを味わいながら楽しく旅の計画を立ててもらいたい、と思っています。また、ホテルの周辺には温泉仕様の銭湯が多くあるので、おすすめの銭湯を紹介するマップを制作し、配布しています。定期的にマルシェを開催し、生産者が野菜やチーズなどを販売するほか、映画の上映会やトークショーといったイベントも開催してきました。
メディアで大きく取り上げられたのが、19年に始めた「馬車BAR」です。ばんえい競馬の元競走馬が特製の馬車を引き、ホテルを発着地点として夜のまちを巡ります。馬車の中から景色を眺めながら、ドリンクとおつまみを味わえる人気のツアーです。開拓時代から馬との結び付きが強い十勝ならではの企画で、参加者には非日常を味わってもらえると思います。
コロナ禍では宿泊者が減り、イベントが中止になるなど、打撃を受けました。しかし、ホテルの近隣に設置したコワーキングオフィス、ホテル別館に設けた個室型ワークブースなどで、テレワークやワーケーションの需要を取り込んだことにより、中心街の滞留人口を増幅できたのです。また、すぐでなくても十勝を訪れてもらえるように、オンラインイベントなど全国への情報発信は継続して行いました。
今、新たに進めているのが、帯広を「食べ歩きまち」にしよう、という試みです。国の歩行者利便増進道路「ほこみち」制度を活用し、テイクアウトした料理をホテルがある通りなど、公道に設けたスペースで食べられるようにできないかと、市や商工会議所、企業などと意見交換を重ねてきました。実現すれば、多くの旅行者、そして地元の人にも楽しんでもらえるのではないでしょうか。これからも、まちににぎわいを生み、十勝全体を盛り上げるような取り組みを進めていきたいと思います。
会社データ
社名 : 十勝シティデザイン株式会社
所在地 : 北海道帯広市西2条南10丁目20-3
電話 : 0155-20-2600
創業 : 2014年
事業概要 : 宿泊業・飲食業・自己商標酒類卸売業・小売業
【帯広商工会議所】
※月刊石垣2024年7月号に掲載された記事です。
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