動物である人間には動く仕組みが体に備わっており、その機能を使うことが体にとって自然な状態です。実際、運動をよく行っている人は、心臓病、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗しょう症、がんなどにかかる割合が低く、また、うつや不安の症状を和らげ、生活の質の改善にも効果をもたらすことが認められています。そのため、近年では日頃の運動不足を自覚して、スポーツやジム通いをしている人が増えました。
ただし、心身の健康に良いのは、あくまで〝適度な〟運動です。厚生労働省は適度な運動の基準を、「1回30分以上、週2回以上、息が少し弾む程度」とし、WHOでは「中強度の有酸素運動を週に150~300分、もしくは高強度の有酸素運動を75~150分、また週に2日以上の筋力向上活動」などを推奨しています。しかし、基本の体力には個人差があるので、自分に合った強度=適度といえます。
ところが、体力を過信して適度を超えてしまう場合が少なくありません。それが続くと、関節障害や腰痛、転倒による骨折などが起こりやすくなります。人によっては血圧上昇を招いたり、運動強度が強すぎてストレスとなり、メンタル不調を起こしたりするケースもあります。健康のために始めたのに、体を壊しては本末転倒です。
適度を超えないコツは、自分の体とよく会話することです。疲れているときやちょっと億劫(おっくう)に感じるときは休むなど、いつもより運動量を減らすことが肝心です。また、運動前に血圧測定をし、準備運動で体の状態を確認するよう習慣づけると良いでしょう。
趣味やライフワークとしてサッカーやテニス、マラソンなど運動負荷の高いスポーツを行っている場合は、体力や技量に合ったチームやパートナーを選ぶことが大事です。入念に準備運動を行うのはもちろん、日常的に筋力強化やストレッチなどを行って体のコンディションを維持する努力も必要です。
運動を健康につなげるには、今の自分に合っていることが何より大切です。つらさや痛みを感じず、楽しんで行えているかを常に意識しながら、無理のない継続を目指しましょう。
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