銀座に焼き肉のミノが最高の店があり、何人もの人を連れて行き、喜ばれました。しかしある時、いつもと全く違う食感のミノが出てきて気分を害し、「もうここには来ない」と決めました。しかし3カ月もすると気になって、今日はどうかな、と顔を出す始末。元通りだったので、やっぱり通うことにしました。
これとは逆に、素晴らしいサービスを受けたので、「良い店だから」と自慢半分で友人を連れて行ったところ、大きく期待が外れ、それをきっかけに足が遠のき、そのままになった店もあります。味の問題は時間が解決しますが、人の対応は心にわだかまりを残し、なかなか消えることはありません。
プロのサービスとはどのようなものなのかを、私に教えてくれた人がいます。「接客の神様」と呼ばれた株式会社HUGE (ヒュージ)の新川義弘さんは、以前私との対談でこうおっしゃいました。 「店が暇な時に来たお客さまに、手があるからといって、いつもはできない特別なサービスをしてはいけません。お客さまには、店が一番忙しい時にできる最高のサービス以上のものを提供してはいけないのです。なぜなら、次回それができなかった時、逆にがっかりさせてしまうからです」
まさにこれです。サービスはいつも同じでなければならないのです。だからといって、マニュアル対応ではお客さまへのサービスを見失ってしまいます。マニュアルは最低限やらないといけないことであって、サービスはお客さまの心を満たすためのこと。お客さまは一人一人違う心を持っているので、マニュアルでは満たされません。
このご時世、スマホが友達で、生の人との関係が希薄という若者も少なくありません。ですから、作業は器用にこなしますが、言葉の表現が上っ面で気持ちが全く伝わってこないということが多々あります。
そんな中、最近「良いな~」と思ったのは、コンビニでアルバイトしている外国人のサービスです。言葉はイマイチで、ニコニコも下手ですが、内側は温かい心があふれているんだ、と感じる経験をしました。
初めて使うセルフレジで勝手が分からず戸惑っていると、スタッフの外国人青年が丁寧に、時々私の顔をのぞきながら教えてくれました。その教え方が優しくて分かりやすく、「あ~、この人には妹か弟がいて、教えることに慣れている優しい人だな」と、その人の家族構成まで想像しました。
それを機にコンビニの外国人に対する見方が変わり、以来、行くのが楽しくなっています。器用さよりも、不器用だったり、未完成だったりする方が、人の気持ちを温めることを久々に実感しました。
お問い合わせ先
社名 : 株式会社 風土
TEL : 03-5423-2323
担当 : 髙橋
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