私は若い頃たくさんの失敗をしてきました。大学院を中退し、専務として家業のディスカウントストアに入った当時、古参、新人を問わずスタッフが駄目に見えて仕方ありませんでした。実際は自分が駄目な上司だったのですが、それに気付くまでに数年かかりました。
人は誰しも、相手から自分のことを重要であると考えてもらいたいものです。社内のいずれか一人が欠けても業務の質が落ちるわけですから、全ての社員が重要ということですが、当時の私にはそういった発想はありませんでした。
例えば部下が何かを言おうとする時、話の半分も聞き終わらないうちに、「君の言いたいことはこういうことだろう……」と、相手に全てを言わせませんでした。しかし半年ほどで、「専務は宇宙人みたいだ」「自分たちの意見なんか必要ない」といった空気が社内に広がり、私は考えを改めざるを得なくなります。仲良くしないといけない、打ち解ける雑談が必要だと思うようになり、一緒に食事に行ったり、酒を飲んだり、挙げ句の果てにはマージャンまでやるようになりました。当時はそういった付き合いが効果的な時代で、相互理解が進み、やがて一体感ある組織にすることができました。
このような経験の中で分かったことは、人と相対する時は、相手を重要人物として扱うということです。最も分かりやすく効果的な方法として、話を聞く時のノートがあります。
私は部下やクライアントの話を聞く時、相手の言うことをほぼノートに書き取ります。そして必要だと思うことを箇条書きにして、相手に「ポイントはこれとこれでいいですか」と、確認します。
相談事は相手が真剣に聞いてくれて、まとめてくれた段階で7割、それを復唱してくれたら9割解決しています。なぜなら、心の中でおのおのが回答を持っているからです。例えば会社を辞める相談の場合、本当は引き止めてもらいたい、または、けんか別れしてでも辞める、などといった考えを抱きつつ話を切り出しているのです。
私は会社にとってプラスとなる解決策を提案します。その時、しっかりノートを取り、真剣に考えた行為そのものが、相手を説得する結果をもたらします。たとえ辞めてもらいたい社員でも、「社にとっては損失だけど、君を応援したいから……」と言えば、同じ効果を発揮し、辞めた後も会社の悪口を言わない、外部の応援者とすることができます。
人との会話をノートに取ること。この行為は、「あなたを大事に思っています」という気持ちの一番簡単な表現方法です。ぜひ上司の重要なスキルとして習慣づけてください。

