まちで新入社員のスーツ姿を見かける季節になりました。
私は、若者を育てるには、まず社会常識を身に付けることの大切さを伝えなければならないという考えから、“しつけとマナー”を入社式の話のテーマとして選んできました。
昔から、「最近の若者は社会的常識が欠落している」という言葉を耳にします。今の若者だけでなく、昔から若者は常識がないものとされてきました。それは当然の話で、彼らにとって常識とは自分世代、18歳や22歳の常識のことで、ほかの世代は想定していないのです。しかし社会人になった日から会社で求められるのは、会社の常識であり、社会的常識です。それは何かというと、お付き合いするあらゆる年代層の人の常識のことで、若者が考えている常識とは、言葉の意味が違っています。
コンサルタントという仕事を想定すると、クライアントが50歳の経営者であった場合、仕事を依頼されるためには、まず50歳の経営者のマインドと常識を理解する必要があります。それができないと、「若いやつはマナーが悪い、口の利き方を知らない、話が通じない」といった、枝葉末節の問題が先になってしまい、仕事が取れるはずがありません。若い世代の常識しか持たないサラリーマンに自社の運命を託すわけがないからです。
昨今では不適切な質問と捉える向きもありますが、私が面接をしていた当時は、家族構成や、家が商売をやっているのか、サラリーマン家庭なのか、などを確認しました。それは三世代同居など家族が多い家庭で育つと、多世代の常識を持っていることが想定されるからです。また、商売人や農家など経営者の家庭で育つと、両親の背中を見ているので、人間関係の上に仕事がある、ということをすでに知っており、気配りや、目配りの重要性を身に付けている場合も少なくありませんでした。
もちろん会社は、どのような環境で育った社員にも時間をかけて、社会的常識の重要性としつけ・マナーをたたき込む必要があります。そのためには、まずは彼らに、「自分は現時点において、社会的常識はない」ということに気付いてもらって、素直に吸収してもらえばよいのです。
会社によっては早く一人前に育てたいという思いから、教育は早々に仕事の中身だけを教える場合もあるかもしれませんが、それではよろいを着せずに戦地に向かわせるのと同じ。自分の劣った行動によって、相手に後ろ指をさされたり、感情的な借りができたりと、起こらなくてもよい災いが降り注ぐことになります。
純粋に、仕事で競い合える土俵に立たせてやるために、この基礎教育はとても重要だと考えています。

