長く日本の海外生産拠点であり、巨大な市場も含めて日本と深い経済関係を持ってきた中国だが、昨今、関係が急激に冷え込み、特定の国への経済的依存の危うさを露呈させた。一方で、日本にとって中国に次ぐアジアの製造拠点であり、巨大市場としての可能性も秘めるASEAN(アセアン)への期待が高まっている。今号はASEANを有望な市場と考え、進出した企業の決断に迫った。
タイとベトナムに和食レストランを出店 自社ブランドを軸に海外販路を拡大中
2013年に、タイの首都バンコクに出店を果たした梅の花グループ。25年8月には、ASEANの中でも人口約1億人、平均年齢33・9歳と急成長するベトナムにも現地法人を設立した。その際に活用したのが「ワンストップ海外展開相談窓口」だ。持ち前の決断力と行動力で、ASEAN諸国に商機があると判断し、事業拡大を進める。
現地法人との合弁会社で訪日率の高いタイに出店
福岡県久留米市に拠点を置く梅の花グループは、和食レストラン「湯葉と豆腐の店 梅の花」をはじめ、「和食鍋処 すし半」や「海鮮処 さくら水産」、すし販売店「古市庵(こいちあん)」など、17ブランドのレストランや販売店を展開している。その数は、国内外合わせて276店舗(2026年1月31日現在)にのぼる。添加物や化学調味料の使用を極力控える独自ブランドを確立し、現在は外食事業とテイクアウト事業を主軸に、外販事業、海外事業、ストック事業の五つを手掛ける。
「全国4カ所に、セントラルキッチン(集中調理施設)を設けています。そこである程度調理し、各店舗が仕上げる。機械化と手づくりを掛け合わせ、品質と安全性を担保した食のネットワークを構築しています」
そう語るのは、代表取締役会長CEOの本多裕二さん。海外事業は、全事業の1割未満というが、今後の国内市場の縮小を見据え、注力していく分野であると説く。同社は、02年に東証二部上場(22年よりスタンダードに移行)した翌年、タイ・バンコクに子会社「UMENOHANA(THAILAND)」を設立し、海外事業を始めた。
「創業者がタイを訪問した際に、タイ古式マッサージに商機を感じて立ち上げました。タイ古式マッサージの国内展開を目的としており、飲食店としてのタイへの出店は13年になります」
飲食店としてのタイ進出は、13年に現地の上場企業であるS&P(S&P Syndicate Public Company Limited)から声が掛かったのが発端だ。S&Pが60%、梅の花グループが40%出資し、合弁会社UMENOHANA S&Pを設立。そして同年11月、梅の花トンロー店がバンコクにオープンした。
「ワンストップ海外展開相談窓口」を糸口にベトナムへ
「和食レストランは、日本の味が現地に受け入れられるかが問われます。幸いにも、タイ人の訪日率はASEANトップクラスです。ヘルシーで高品質な和食を求める現地のニーズは高く、日本とほぼ同レベルでの提供が可能でした」
だが、タイ国内は軍事クーデターや、日本を上回る少子高齢化、コロナ禍やコロナ禍後の経済回復の鈍化などにより、経済は不安定である。
「中でも一番の課題は、合弁会社の経営です。弊社の理念は『人に感謝、物に感謝』。利益率も大事ですが、おいしい食を提供したいというブランドの誇りがありました」
20年にはソラリア西鉄ホテルバンコク内に新店舗をオープンしたが、23年4月、S&Pとの合弁を解消。トンロー店をライセンス契約とし、ソラリア店以降の店は、UMENOHANA(THAILAND)が運営している。25年10月には「銀座しゃぶしゃぶ甲梅」をオープンするなど店舗数を増やすと同時に、ほかのASEAN諸国への出店構想を練った。だが、食材の現地調達や輸出規制、現地法人とのパートナーシップ構築は思うように進まない。そこで相談先に選んだのが「ワンストップ海外展開相談窓口」だ。ジェトロ福岡、中小機構九州本部、福岡貿易会、グローバルコネクト福岡、そして事務局を務める福岡商工会議所の五つで構成されており、九州地区の事業者の海外事業を多角的に支援している。
梅の花グループは、同相談窓口のデータ収集力、信頼性の高い現地情報を活用し、タイに次ぐ出店先をベトナムに絞り込んでいった。
現地調査を入念に行い各国の店舗展開を加速
さらに福岡商工会議所の紹介で、ベトナム商工会議所を訪ね、現地の成功事例や市場トレンド、ライセンス取得方法などを調査する。その後も複数回にわたって現地調査を重ね、資本金約3000万円のうち88%を出資(残りは現地企業など)して、25年8月、ハノイに現地法人Umenohana Vietnamを設立した。2カ月後には、焼き肉・しゃぶしゃぶレストラン「NOBU」の店舗事業を取得するなど、相談窓口も驚く速さで事業を進めた。
「ベトナムは、タイほど和食の認知度がなく、地域によって食文化も異なります。また、輸入規制などの行政上のルールが複雑で、急な制度変更も多く、こちらのミス以外で再申請を求められることも珍しくありません」
それでも日本からの物理的な距離の近さ、人口増により成長が見込めるASEANは「挑戦すべき市場」と位置付ける。26年5月以降にインドネシア、フィリピンへの出店を目指しており、27年4月期以降にはタイ、ベトナムともに店舗数20店を目標に掲げる。
「海外事業は、まずトップ自らが現地に行くこと、現地に詳しいコンサル会社を見つけることが必須です。タイは、中国人や日本人の観光客が減少し、高級レストランは軒並み低調ですが、タイに建設したセントラルキッチンの閉鎖や事務所の縮小を断行し、黒字に転じました。来期は、さらに売り上げが2億5000万円に増加する見込みです。各国の事業拡大はまだまだこれからです」とASEANにビジネスチャンスを見いだしている。
会社データ
社 名 : 株式会社梅の花グループ
所在地 : 福岡県久留米市天神町146
電 話 : 0942-38-3440
HP : https://www.umenohana.co.jp
代表者 : 本多裕二 代表取締役会長CEO
従業員 : 593人(2026年1月31日現在)
【福岡・久留米商工会議所】
※月刊石垣2026年4月号に掲載された記事です。
