長く日本の海外生産拠点であり、巨大な市場も含めて日本と深い経済関係を持ってきた中国だが、昨今、関係が急激に冷え込み、特定の国への経済的依存の危うさを露呈させた。一方で、日本にとって中国に次ぐアジアの製造拠点であり、巨大市場としての可能性も秘めるASEAN(アセアン)への期待が高まっている。今号はASEANを有望な市場と考え、進出した企業の決断に迫った。
自動パン粉付け機をベトナムへ 直接輸出で実現した日本の高品質
石川県白山市にあるマイコック産業は、とんかつやエビフライなどの揚げ物をつくる際、自動でパン粉を付ける機械の専門メーカーである。パン粉を合理的に、食感も良く付けることができるため、食品スーパーや飲食店チェーン、冷凍食品メーカーなど、同社の製品は世界で活躍している。同社は、2015年から本格的に海外への直接輸出を目指してベトナムへの輸出を実現し、さらに販路を拡大している。
惣菜店として創業後パン粉付け機専門メーカーへ
マイコック産業は、1978年に創業した。現会長である先代社長が、厨房(ちゅうぼう)機器などの販売を行いながら、惣菜専門店を最大8店舗展開していたのが同社の原点である。
「自ら惣菜店を運営していたからこそ、調理の現場が抱える悩みや、揚げ物のおいしさを誰よりも熟知しています。そのノウハウが注ぎ込まれているんです」と語るのは、同社二代目社長の経塚陽一さんである。同社は特に、生パン粉を合理的に美しく、食感良く付けることができる「手包み感覚」の自動化に、世界で初めて成功した。同社は85年頃から、食品や流通業界の展示会へ積極的に出展し、販路を拡大した。
「エビフライのパン粉付け作業では、30人で行う作業が3~4人で済むほど省人化できる上に、パン粉を付ける熟練の技が不要で、品質が安定するのが最大の特徴です」と経塚さんは胸を張る。2020年には、長年続けた惣菜部門を廃止し、機械製造へと一本化した。
メーカー責任を果たすため直接輸出、地元銀行の伴走
同社は、1990年代から商社を通じて台湾やタイなどへ機械を輸出した実績があった。しかし、当時は商社を介した取引であったため、顧客の声が直接届きにくく、納品後の微調整やアフターフォローに限界を感じていた。
「当社は、機械を売っておしまいではありません。納品後、お客さまがその機械をうまく使いこなせるかどうかが、メーカーとして最も気になるところなんです」と語る経塚さん。
転機となったのは、2014年に日本で開催された展示会である。ベトナムではエビの養殖が非常に盛んで、世界に向けてエビを輸出しており、当時、エビフライ加工需要として日本・韓国・米国・ヨーロッパへ輸出が拡大していた中、ベトナム企業が同社のブースを訪れ、「この機械を1台購入したい」と要望した。これが、同社が直接輸出へ踏み出す決定打となり、15年から海外への直接輸出を本格的に目指した。
