今年度のYEGフラッシュは、商工会議所(親会)とYEGの良好な関係をご紹介します。タイトルの「藍と青」は、渋沢栄一翁の生家の家業が藍農家であったことから、藍を親、青をYEGとし、一般的にいわれる師弟のことではなく、「君子曰く、学は以て已(や)むべからず(学問は中断してはいけない。努力すればするほど精錬されて優れたものになる)」という本来の意味に立って取材します。
かつて城下町として栄え、繊維産業で発展してきた大阪府岸和田市。勇壮な「だんじり祭」で知られ、歴史と伝統が息づく。近年は金属、機械器具、レンズ工業のほか、農業や水産業も盛んである。この地域の活性化に奮闘しているのは、岸和田商工会議所青年部だ。未来を担う青年経済人たちの「だんじり愛=郷土愛」と、彼らの活動を支える岸和田商工会議所を取材した。
まちに新しい風を吹き込む 商工会議所の「実働部隊」
岸和田商工会議所(以下、親会)の中井秀樹会頭は、岸和田商工会議所青年部(以下、YEG)を「商工会議所の実働部隊」と捉えている。 「商工会議所も年を重ねると、どうしても慎重になりがちです。時代に即した感性を持つYEGには、現場を駆け回って新しい風を吹き込んでほしい」と期待する。それに応え、積極的に地域活動にまい進するYEG。そして、「YEGがやりたいことは何でもやらせてあげたい」。そう語る中井会頭の言葉からは、YEGへの深い愛情と信頼が感じられる。
この親子のような信頼関係が、岸和田商工会議所全体の活性化、ひいては会員拡大の成果へとつながっているのだ。
岸和田YEGの特徴は、会員同士の強い絆である。多くのメンバーは、幼い頃から岸和田の伝統文化である「だんじり祭」に参加し、地域との強い結び付きを育んできた。「だんじり愛=郷土愛」を持つ彼らは、地域貢献への意欲が旺盛で、活気あふれるまちづくりを目指している。祭りの運営などを通して培われた、チームワーク、リーダーシップ、そして責任感。これらの経験は、YEGの活動にも生かされているといえるだろう。
未来を見据えたイベントで地域に貢献
YEGが親会の期待に応えて積極的に取り組んでいるものの一つに、親会主催の商工フェアがある。このフェアは、地域経済の活性化を目的として毎年開催されており、YEGはこれまでにも地元に貢献するための重要な活動として、イベントやワークショップなどを行ってきた。昨年度は「岸和田デジタルフェア2023」として開催され、小学生向けのロボットプログラミング教室やコンテストなどを実施した。 「子どもたちが目を輝かせてコンピューターに触れ、プログラミングに挑戦する姿は本当に印象的でした。楽しみながら学べる良い機会になったのではないでしょうか」と、YEGの石川将之直前会長は当時を振り返る。
このロボットプログラミング教室は、子どもたちにものづくりの楽しさを体験してもらうだけでなく、プログラミング的思考を育む機会を提供することを目的にしたものだ。しかし、教材の耐久性や価格の問題といった課題も浮き彫りになったという。
そして本年度は、「岸和田商工フェア2024」として12月に開催。親会の主催ではあるが、2025年に創立40周年を迎えるYEGは、記念講演会に渋沢栄一翁の玄孫(やしゃご)である渋沢健氏を講師に、「論語と算盤(そろばん)で未来を拓(ひら)く」をテーマとする記念講演会を開催した。 「40周年という節目の年に改めて商売の原点に立ち返り、社業の発展を通じて地域の未来を創造していくためのヒントを共有したいという思いから、今回のテーマを設定しました」と、YEGの櫻井亮会長は語る。
そのほかにも、地域の中小企業が自社のPR広告動画を制作して最優秀賞を目指す「きしわだ動画コンテスト」や、岸和田の未来をつくる子どもたちがプログラミング開発した作品を発表する「きしわだKidsプログラミングコンテスト2024」の表彰式、親子プログラミングワークショップなどを開催。近年、デジタル化が加速する中で、地域の子どもたちにITスキルを身に付けてもらうとともに、地域企業のデジタル化を支援し、活性化につなげたいという思いが込められている。
独自性を生かし さらなる拡大を目指す
櫻井会長は、「岸和田の独自性を大切にしながら、組織の状態に合わせて適切な活動を展開していく」と抱負を述べた。具体的には、会員一人一人の個性と能力を最大限に引き出し、それぞれの得意分野を生かした地域貢献活動を展開していく方針である。また、石川直前会長は「政策提言などの新しい取り組みも検討している」と、意欲的な姿勢を示した。
YEGについては「さらなる拡大と組織力強化を目指す」と櫻井会長は語る。今期の目標である会員数100人を達成し、さらなる会員同士の交流を深め、YEG活動の魅力を共有すること、地域貢献活動への参加を促進してYEGの活動を広く知ってもらうこと、女性や若手経営者など多様な人材の加入なども進めていく。
伝統を守りながら、革新を続ける岸和田YEG。その活動は、地域経済の活性化に大きく貢献している。
【岸和田商工会議所】
会 頭 : 中井 秀樹
会員数 : 1930人
設 立 : 1947年
住 所 : 大阪府岸和田市別所町3-13-26
HP:https://www.kishiwada-cci.or.jp
【岸和田YEG】
会 長 : 櫻井 亮
会員数 : 100人
創 立 : 1985年
スローガン :「ヒトトヒトトヒト本業を通じて社会に貢献する」
HP:https://kishiwada-cci.or.jp/yeg/
編集後記
猪原 英和(熊谷YEG)
YEGフラッシュ「藍と青」も残すところ3回となりました。 取材を通じて感じた岸和田YEGと親会との関係性は、「仲が良い」というよりも、「自然体」という言葉の方がしっくりくるものでした。公私の隔てなく古くから地域の仲間としての結び付きを背景とする連帯感が、結果として岸和田YEGの活動にも生かされていると感じます。 取材時は、岸和田YEGの歴代会長など多くの方々にもご協力をいただきました。ありがとうございました!
取材:日本商工会議所青年部(日本YEG)広報☆ブランディング委員会 石垣チーム/写真提供:岸和田商工会議所青年部