青森県弘前市と北海道函館市では、2024年12月から25年2月まで、3回目となる「ひろはこ冬の観光キャンペーン」が開催された。弘前観光コンベンション協会のHPには「弘前市及び函館市への相互誘客や周遊観光の促進、観光消費額増加を図るため、 初音ミク派生キャラクターであり北海道応援キャラクターの『雪ミク』と連携した冬期観光キャンペーンを両市で展開」とある。
「初音ミク」は、07年に発売された音声合成ソフト。ヤマハが開発した「VOCALOID」という技術を用いており、人工的に歌声をつくることができる。初音ミクは、そのパッケージに描かれたキャラクターだった。多くの人が楽曲を作成し、動画投稿サイト「ニコニコ動画」上にアップロードした。ユーザーがコンテンツを生成し、そこからさらに創作が行われて爆発的に広がり、「初音ミク現象」を巻き起こし世界的な人気を得て、「ボカロ曲」という音楽ジャンルの一つを形成するに至った。歌手の米津玄師さんも元は「ボカロP」といわれる投稿者だ。
現実の地域と遊離した電子の世界が中心のカルチャーのようだが、「初音ミク」をリリースしたのは「クリプトン・フューチャー・メディア」という札幌市の企業。「雪ミク」は10年のさっぽろ雪まつりで初音ミクの雪像がつくられたことをきっかけに誕生した。19年には「桜ミク」が弘前さくらまつりの公式応援キャラクターに就任。どんな文化もそこに「人間」が関わっている以上、必ず地域との結びつきがあり、つながりを醸成、発展させていくには時間がかかる。
「新しいカルチャー」のように見えて、すでに18年の歴史を紡ぐ。ゾンビ先生は03年から12年まで北海道大学で過ごした。初音ミクが「なんだそれ?」と奇異の目で見られていた時期を知っている身からすると隔世の感がある。「新しいもの」を積極的に肯定し、その「良さ」を共に広げていく。そのことの大切さを感じる事例だ。