はじめに
本日は、第142回通常会員総会に、井野経済産業副大臣にご臨席を賜り、また全国の商工会議所の皆さまにご出席・ご視聴いただき、誠にありがとうございます。 能登半島地震から2年が経過した本年1月下旬に、輪島、珠洲、七尾の各商工会議所を訪問しましたが、復興はいまだ道半ばであることを実感しました。被災地の真の復興に向け、継続的な支援が必要であり、皆さまの引き続きのご協力をお願いいたします。
変革と価値共創による日本経済の再出発
私は会頭就任以来、「原点は対話である」との信念の下、「現場主義」と「双方向主義」を徹底し、各地に足を運び、皆さまの声に耳を傾け、寄せられたご意見などを踏まえ、政府・政党に力強く政策提言をしてまいりました。 昨年11月、2期目に臨むに当たり、「変革と価値共創による日本経済の再出発」をスローガンとして掲げ、「中小企業・小規模事業者の稼ぐ力の強化」と「地域経済循環の推進」を重点活動としました。 地政学リスクの高まりや通商環境の変化など、先行き不透明感が増す時代において、成長型経済の実現に向けて、絶えず「変革」に挑み続け、新たな価値を共に生み出し、共に栄える「価値共創」を推進することが、これまで以上に重要です。 官民一体となった国内投資の推進、取引適正化を通じた大企業と中小企業の共存共栄、企業間連携や地域間連携の推進など、多様な主体の「共創」が今まさに強く求められています。
成長型経済の実現に向けた環境整備
世界を見渡しますと、自国第一主義の潮流が強まり、力による現状変更に向けた動きが強まるなど、国際秩序は分断と不確実性の真っただ中にあり、従来の国際社会の枠組みは大きな転換点を迎えています。 こうした中、国内の政治経済の基盤強化が、さらに重要になります。先月、第2次高市内閣が発足し、政権与党が強固な政治基盤を手にした今こそ、市場からの信認を前提に、わが国の経済社会を発展させるため、中長期的な課題の解決に取り組むことが必要です。 国内投資やイノベーションを誘発する成長戦略の策定、為替を含む金融環境の安定に加え、エネルギー・食料を含む経済安全保障の確立、国際競争力の強化に資するサプライチェーンの強靭化などについて、果断に取り組むことを期待します。 また、人口減少・少子高齢化と労働力不足という構造的問題に直面する中、給付と負担の見直しをはじめとする税財政・社会保障制度の在り方、教育界との協働による地域産業人材育成、外国人との秩序ある共生社会実現などの課題について、真正面から取り組む必要があります。 このような中、商工会議所が取り組むべき課題を、3点申し上げます。
1.変革と価値共創による中小企業・小規模事業者の稼ぐ力の強化
成長型経済の主役は、企業数の99・7%、雇用の約7割(都市部を除くと約8~9割)を支える中小企業・小規模事業者です。 今春闘も引き続き、大手企業各社から大幅な賃上げの回答が示されておりますが、この賃上げの動きが、地方を含む中小企業・小規模事業者へ波及し、社会全体で定着することが何より重要です。 しかしながら足元では、過度な円安による原材料・エネルギー価格の高騰が続き、人手不足も深刻さを増しています。多くの中小企業が、防衛的な賃上げを余儀なくされているのが実情です。 現在、実質賃金の回復が課題となる中、価格転嫁や生産性向上の推進を通じて「中小企業の稼ぐ力」を強化し、持続的な賃上げに取り組める環境を確保することが必要です。 大きな課題が「価格転嫁の定着」です。本年1月に「中小受託取引適正化法(取適法)」が施行され、今月は「価格交渉促進月間」です。サプライチェーン全体の共存共栄を図る観点から、「パートナーシップ構築宣言」を踏まえ、官公需を含めた価格転嫁を強力に進め、社会全体で賃上げの流れを定着させることが求められています。 同時に、中小企業自身も変わらなければなりません。人手不足は構造的な課題であり、生成AIやロボットの活用による省力化・デジタル化の推進、高齢者・女性・外国人など多様な人材が活躍できる職場づくりを進め、「少数精鋭成長モデル」へ移行する必要があります。 その一方で、「働き方改革」は一定の成果が見られるものの、建設・運輸などの業界を中心に、企業経営にさまざまな支障が生じているとの声が寄せられています。労使の実態を踏まえた議論の下、労働安全性を確保した上で、より柔軟な運用ができる制度設計を求めてまいります。 また、新分野進出やオープンイノベーション、DX・GX、知的財産の保護・活用など、付加価値を高める変革に果敢に挑戦することが重要です。 事業承継は待ったなしです。後継者にとって事業承継は第二創業の好機でもあり、政府・政党には、今年末の税制改正において「事業承継税制の特例措置の恒久化」の実現を強く要望します。 海外需要の取り込みも重要です。商工会議所は政府やJETRO、在外日本商工会議所などとの連携強化により、中小企業の海外展開を支援するとともに、日本商工会議所は10月にインドに経済ミッションを派遣し、民間経済交流を進めます。 現在の中東情勢を踏まえると、エネルギーの安定供給はやはり重要だと再認識しました。今年に入り、新潟県の柏崎刈羽原子力発電所が再稼働を果たし、安定供給と脱炭素の両立に向けた大きな一歩となりました。引き続き、安全性が確保された原発の再稼働に加え、新増設・リプレース、省エネルギー対策、脱炭素関連投資の拡大に、政府主導で取り組むことが必要です。
2.地域の稼ぐ力の向上による地域経済循環の推進
人口減少に直面する地域経済にとって、良質な雇用をもたらす「稼ぐ産業」の育成と、若者・女性が「住みたい・働きたい・戻りたい」と思えるまちづくりを両輪に、「地域経済の好循環」を強く・太くする取り組みが重要です。 各地で、半導体をはじめ国内への投資回帰や、好調なインバウンド消費、農林水産物の輸出拡大など、地域の将来を担う産業群が力強い動きを見せています。今こそ、こうしたモメンタムを捉え、官民が連携し、地方へ投資と消費を呼び込むことで、盤石な経済基盤を構築すべきです。 政府には、戦略17分野を軸にめりはりをつけながら地域投資を着実に促進させるとともに、中堅・中小企業の挑戦を後押しするため、産業用地やインフラ整備を含め強力な投資支援策を強く求めます。 さらに、外需獲得・地域活性化の切り札である観光の基幹産業化に向け、地域資源を生かした観光地域づくりによる地方誘客、周遊・長期滞在の促進などの取り組みが必要です。 また、地方都市の魅力を高める文化・スポーツ・ビジネス拠点などの機能集積、小売・交通などエッセンシャルサービスの維持・向上など地域のポテンシャルを最大限引き出すための支援も重要な課題です。一方、足元では建築コストの増加などを背景に、中心市街地における再開発プロジェクトの見直しが相次いでおり、一刻も早い状況の打開が求められます。 この夏には、政府の重点政策である「地域未来戦略」が本格稼働します。民間の意見が地域の産業政策に反映される仕組みづくりとともに、政策が果敢に実行されるよう、政府に要望します。 なお、昨年の大阪・関西万博は、2900万人を超える来場者を迎え、「新しい日本の幕開け」を国内外に示す大きな成果を収め、中小企業の技術を世界中にアピールする大きな機会にもなりました。皆さまのご尽力・ご協力に深く感謝申し上げます。 本年9月から愛知・名古屋を中心に「アジア競技大会・アジアパラ競技大会」が開催されます。さらに、来年3月から横浜で「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO2027)」が開催されますが、機運醸成やチケットの購入、現地参加など、皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。これらの国際的なビッグイベントを起爆剤として、インバウンド需要を各地域へ波及させ、地域の稼ぐ力を高めることが期待されます。
3.地域の中核を担う商工会議所機能の強化
こうした課題の克服に向け、地域総合経済団体である商工会議所には、中小企業・小規模事業者の自己変革を伴走型で支援すること、行政や他団体など多様な主体をつなぐ中核的機能を果たし地域活性化に取り組むこと、が求められています。 その役割を果たすには、「組織・財政基盤の強化」が必要です。会員増強や広報強化、青年部・女性会の活動促進に加え、産業人材の育成につながる検定試験の普及、経営上のリスクに備えるビジネス総合保険、従業員の福利厚生に資する共済の推進、職員の資質向上や待遇改善が必要です。 特に、「経営支援体制の強化」は不可欠です。一昨年より全国の経営指導員と直接懇談を重ねる中で、経営支援こそが地域における商工会議所活動の根幹であると、改めて確信しています。また、経営指導員は、現場の生きた情報や切実な声を適時に把握しており、地に足の着いた政策提言を行っていくためにも極めて重要な存在です。 都道府県商工会議所連合会の皆さまには、知事に対し、直接、経営指導員数の拡充・待遇向上など、力強い要望をお願いいたします。 商工会議所自身のデジタル化では、急速に進化する生成AIの活用が大きな鍵を握りますので、全国の商工会議所に対する支援をさらに強化します。
おわりに
日本商工会議所は、来月1日に設立される沖縄県の宜野湾(ぎのわん)商工会議所を含め、全国516商工会議所と青年部・女性会による強固なネットワークという最大の強みを生かし、「地域とともに、未来を創る」という理念の下、中期行動計画(2026-2028)で掲げた「変革と価値共創による日本経済の再出発」の実現に向け、希望を持って挑戦し続けます。 皆さまのさらなるご協力をお願い申し上げ、私のあいさつとします。
