本日は、第143回通常会員総会に、井野経済産業副大臣、各政党のご来賓の皆さまにご臨席を賜り、誠にありがとうございます。また全国の商工会議所の皆さまにご出席・ご視聴いただき、重ねてお礼申し上げます。
はじめに、この夏は、7月に熊本地震が発生した他、多くの地域で豪雨が発生し、甚大な被害をもたらしました。 被災された皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。
被災地では、発災直後から特別相談窓口を設置し、事業再開支援などに懸命に取り組んでおられます。特に熊本地震については、被災地のニーズを踏まえつつ、各地商工会議所に災害支援金へのご協力をお願いしているほか、経営指導員の応援出張など、全国の商工会議所ネットワークを最大限生かした支援を進めています。一日も早い復旧・復興に向けご協力をお願い申し上げます。
さて、わが国経済は今、長らく続いたデフレの時代からようやく脱却し、「成長型経済」の実現に向けた正念場を迎えています。
コスト削減に頼る縮小均衡から抜け出し、未来への「投資」と持続的な「賃上げ」を生み出す力強い経済への移行を確かなものとするため、今こそ、政府・中小企業・地域が一丸となり、次の3点に取り組む必要があります。
成長戦略の着実な実施
まず1点目は、成長戦略の着実な実施です。足元では、深刻な人手不足やコスト高、不安定な国際情勢による不確実性の高まりなど多くの課題に直面しておりますが、名目GDPは過去最高を記録するなど、日本経済は全体として見れば、決して悪くない状況と認識しております。
一方、わが国の生産性は、「失われた30年」の間、約30%向上したにもかかわらず、賃金上昇には反映されてきませんでした。
デフレからインフレに転換する「変化の時代」において、付加価値の分配の在り方を見つめ直す必要があります。生産性向上と価格転嫁による「稼ぐ力」の強化を通じ、「防衛的賃上げ」から「成長のための賃上げ」へと昇華させていくことが不可欠です。
本年7月に決定された政府の「日本成長戦略」「地域未来戦略」において、供給制約の克服と持続的な賃上げ環境の整備に向け、官民連携による徹底的な国内投資の促進や、中小企業の稼ぐ力の強化などが盛り込まれたことを高く評価しています。国内投資の果実を地域の隅々にまで広く行き渡らせるため、各戦略で示された施策が迅速に実行されることを期待しております。
また、来年4月から2年間の飲食料品に係る消費税減税などが閣議決定されました。過度な円安や金利の急速な上昇が企業経営や消費の重荷となる中で、財源確保を明確に打ち出し、市場の信認を得ることが不可欠です。なお、代替財源の検討に際しては、深刻なコスト増に直面しながらも、賃上げや成長投資に取り組む中小企業・小規模事業者への支援を縮減すべきではありません。併せて、過重な保険料負担の軽減に資する社会保障制度改革の着実な実行も求められます。
変革と共創による中小企業の稼ぐ力の強化
2点目は、変革と共創による中小企業の稼ぐ力の強化です。成長型経済の主役は、雇用の約7割、三大都市圏を除くと約9割を支える中小企業・小規模事業者です。原材料・エネルギー価格の高騰や深刻な人手不足に加え、金利上昇による投資への慎重姿勢が広がる懸念もありますが、優秀な人材を引きつけるためには、中小企業・小規模事業者の自己変革による「稼ぐ力」を抜本的に強化し、持続的な賃上げに取り組むことが不可欠です。
そのために求められるのは、まずは賃上げ原資の確保に向けた価格転嫁・取引適正化のさらなる徹底です。中東情勢の影響も加わり、価格転嫁はいまだ道半ばであります。サプライチェーン全体の共存共栄を図る観点から、官公需を含めた価格転嫁を強力に進めることが求められます。
次に、成長支援と生産性向上です。労働供給制約社会においては、単に省力化の視点のみならず、AX(AIトランスフォーメーション)をはじめ生成AIやロボット活用などによる業務改革を大胆に進めていくことが極めて重要です。こうした意欲的な取り組みを進める中で、「働き方改革」や労働時間規制などにより、建設・運輸業などを中心とした地域インフラを担う企業の事業運営にさまざまな支障が生じているとの声が寄せられています。先日、日商の主張などを受け、労働基準監督署の運用が見直されたことは評価しておりますが、労働者の健康確保を前提に、変形労働時間制の要件緩和など、より柔軟な労働時間制度の実現を求めてまいります。
さらに、新分野への進出やスタートアップなどとの連携によるオープンイノベーション、知的財産の保護・活用、海外展開も含めた販路開拓など、新たな付加価値の創出が必要です。
特に、次世代へのバトンタッチによる第二創業は待ったなしの課題であります。今年の税制改正では、「事業承継税制の拡充・恒久化」を強く求めてまいります。また、国税庁による「非上場株式の評価方式の見直し」は、中小企業の事業承継を崩壊させるのではないかと強く懸念しております。さらなる負担増を伴う見直しに対し、強く反対を訴えてまいります。
加えて、海外需要の取り込みに向けて、海外との連携を深めることも重要です。政府は、中小企業の輸出を後押しする手厚い支援策を講じており、われわれもこれを最大限に活用して外需を獲得していくことが求められます。日商としても、来月末にインドへ経済ミッションを派遣し、新たな市場開拓に向けた民間経済交流を推進します。
エネルギーの安定供給については、本年初頭に柏崎刈羽原子力発電所が約14年ぶりに再稼働を果たしました。引き続き、安全性が確保された原発の早期再稼働に加え、新増設・リプレース、バックエンド対策などに政府主導で取り組むことが必要です。さらに、脱炭素社会の実現には、中小企業の主体的な取り組みが欠かせません。まずはコスト削減を実感できる「省エネ診断」を第一歩として、足元から中小企業の脱炭素化を力強く進めることが求められます。
地域の稼ぐ力の向上による地域経済循環の推進
3点目は、地域の稼ぐ力の向上による地域経済循環の推進です。「地域経済の好循環」の実現には、地域の強みやポテンシャルを生かした産業育成と投資拡大、若者・女性や外国人をはじめ多様な人材が活躍できる環境づくり、さらに投資を呼び込むインフラ整備が不可欠です。
特にインフラ整備は、頻発化・激甚化する自然災害から、地域の安全を守る国土強靭化の観点においても重要です。
地方における産業育成・投資拡大に向けては、地場産業の付加価値向上や産業クラスターの戦略的形成などを通じて、強い地域経済の構築を目指す「地域未来戦略」に期待しています。戦略の実効性を確保するためには、地域を熟知した地域企業との連携が欠かせません。各地商工会議所の皆さまには、地方自治体の戦略策定に際し、積極的なご参画をお願いします。
また、強い経済の構築には、外貨獲得・地域活性化の切り札である観光の基幹産業化も極めて重要です。デジタルを活用した観光産業の生産性向上とともに、地域が誇る質の高い地域資源を最大限に生かした観光の高付加価値化を推進する必要があります。
加えて、産業の基盤である人材の確保については、大都市の専門人材が他地域で活躍できる仕組みの構築、各地域の教育機関と産業界との連携による産業人材育成、外国人材との共生社会の実現が重要です。
さらに、住民の豊かな暮らしに不可欠な交通、物流、商業、医療・福祉などエッセンシャルサービスの維持・向上も含め、持続可能なまちづくりも欠かせません。これらを支える体制強化には、各地商工会議所の積極的な参画も期待されております。
こうした中、愛知・名古屋を中心に、すでに予選が繰り広げられている「アジア競技大会」、来月には「アジアパラ競技大会」が開催されます。さらに来年3月には横浜で「2027年国際園芸博覧会」が控えています。各地商工会議所の皆さまには、機運醸成やチケットの購入、現地参加などのご協力をよろしくお願いいたします。これらの国際的なビッグイベントを起爆剤として、地域の稼ぐ力を一層高めてまいりたいと存じます。
地域の中核を担う商工会議所機能の強化
最後に、地域の中核を担う商工会議所の機能強化について申し上げます。
私は会頭就任以来、「現場主義」「双方向主義」を掲げ、全国各地を訪ね、皆さまとの対話を重ねながら、商工会議所の多岐にわたる活動や直面する課題をうかがってまいりました。
近年、地域や事業者が直面する課題が高度化・多様化する中で、中小企業・小規模事業者に寄り添った伴走支援、行政をはじめ多様な主体との共創を通じて地域活性化を担う商工会議所への期待はますます高まっていると実感しております。
こうした地域からの期待に応えていくためには、「組織力と財政基盤の強化」が必要です。
会員増強やPR活動の強化、青年部・女性会の活動推進に加え、地域産業人材育成に資する検定試験や保険・共済などの収益事業の拡大、デジタル化の推進、職員の能力開発や待遇向上が欠かせません。
特に、中小企業・小規模事業者に自己変革を促す「経営指導員」による伴走支援は、地域における商工会議所活動の根幹であり、経営支援体制の強化は喫緊の課題であります。
先般、高市総理にお会いした際、私から経営指導員の待遇改善をお伝えしました。引き続き、都道府県商工会議所連合会を中心に、知事に対して経営指導員数の拡充、待遇改善など力強い働きかけをよろしくお願いいたします。
また、商工会議所自身の変革に不可欠なデジタル化については、急速に進化する生成AIの活用が重要です。商工会議所が人手不足を克服し、地域DXのけん引役となるよう、具体的な活用支援を進めてまいります。
われわれ商工会議所の最大の強みは、全国516商工会議所と124万会員、青年部・女性会、海外の商工会議所などとの強固なネットワーク力です。
日本商工会議所は、この強みを存分に生かし、「地域とともに、未来を創る」という理念の下、「変革と価値共創による日本経済の再出発」の実現に向け、希望をもって挑戦し続けます。
皆さまのさらなるご協力をお願い申し上げ、私のあいさつとします。
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