時間帯を変えて文化を見せ直す
秋は日没が早まり、夜の時間が長く感じられる季節です。観光地にとって、この時間帯をどう生かすかは重要な経営テーマになっています。
昼間に名所を訪れ、夕方には次の地域へ移動してしまう。こうした「通過型観光」では、来訪者が増えても地域の飲食店や小売店、宿泊施設に十分な消費(お金)が落ちません。そこで注目されているのが、夜の時間に新たな体験を提供するナイトタイムエコノミーです。
成功例が、長崎市のランタンフェスティバルです。もともとは新地中華街の人々が中国の旧正月を祝う地域行事でしたが、1994年から市全体の催しへと拡大しました。市内に約1万5千個のランタンや大型オブジェが飾られ、龍踊りや中国雑技、パレードなどが行われます。
市内各所に会場を設け、来訪者の回遊を促し、飲食や買い物、宿泊へと消費を広げています。地域文化を夜の体験に再編集し、冬の観光需要を生み出した好例といえるでしょう。
夜景やライトアップだけが対象ではありません。寺社や歴史的建造物の夜間公開、地元の食と酒を楽しむまち歩き、職人の工房を訪ねる少人数ツアー、地域の物語を伝える演劇や音楽イベントなど、昼間とは異なる地域の表情を商品にできます。既にある場所や文化を、時間帯を変えて見せ直すことで、投資を抑えながら価値を生み出せる点も魅力です。
地域全体で体験の設計を
大切なのは、各店舗が営業時間を延ばすだけで終わらせないことです。夜に開いている店が点在していても、移動手段や情報発信、安全面が整っていなければ、安心して楽しめません。飲食店、宿泊施設、交通事業者、文化施設などが連携し、地域全体の体験として設計する必要があります。
夕方に歴史を巡り、その後、郷土料理を味わい、最後は宿で地酒を楽しむ。こうした流れができれば、1社の商品が地域全体の消費へと広がり、朝食や翌日の買い物にも波及します。
夜間営業には人手不足や光熱費、防犯、騒音といった課題があります。毎日の実施を前提とせず、まず週末や特定日だけの催しから始め、予約制にして需要を確かめる方法が現実的です。参加者数だけでなく、1人当たりの消費額、滞在時間、宿泊率、再訪意向も確認すれば、次の改善につながります。
昼間は見慣れた風景でも、夜になれば光、音、食、人との交流によって別の価値を帯びます。
眠っている時間を地域資源として捉え直し、複数の事業者が連携して小さく試す。秋の夜長は、地域の新たな商機を考える好機ではないでしょうか。
(立教大学大学院非常勤講師・高城幸司)