スポーツ選手の髪の毛の色について語るのは、本コラムの主旨からするとかなり逸脱したテーマかもしれないが、当方も思い切って普段と違う色を出してみよう。
1993年のJリーグ発足後、サッカーのトップ選手たちの多くは、金髪でプレーしていた。また日本代表に招集された選手は、代表戦の前に金髪や奇抜な髪形で現れて周囲の目を引いていた。サッカー選手にオシャレ好きが多いというのもあるのだろうが、彼らの目的はファッション以外にもあったはずだ。
それは文字通り目立つこと。金髪で試合に臨むことで、自身のプレーをより印象に残そうとしていたのだ。
なぜか? 海外のスカウトの目に留まって日本を飛び出していくためである。「カズ」こと三浦知良(横浜FC)を先頭に、城彰二や中田英寿、稲本潤一や戸田和幸などが金髪や派手な髪型で海外のクラブに次々と渡っていった。もちろん評価されたのはテクニックであって髪の色ではないが、その色や髪形に表れている彼らの自己顕示欲が活躍の原動力になっていたことは間違いないだろう。
しかし、時代が変わり多くの日本人選手が海外でプレーする今、髪の毛の色でアピールする必要もなくなったのだろう。日本代表の長谷部誠(フランクフルト)も香川真司(ドルトムント)も吉田麻也(サウサンプトン)も黒い髪のままでドイツやイギリスでプレーしている。
そんな中で久しぶりに金髪の選手を見た。先のW杯で大活躍した長友佑都(ガラタサライ)である。左のサイドバックとして何度も好機を演出し、プレーでも髪の毛の色でも抜群の存在感を見せていた。
しかし、長友の金髪は前述の意味とは違っていた。大会直前にSNSでつぶやいた「年齢で物事を判断する人はサッカーを知らない人」がちょっとした騒動になった後のことだった。自らを「炎上隊長」と命名し髪を金髪にして現れたのだ。
長友が金髪に込めた思いは何だったのだろうか。30代の彼にとって金髪は若さの証であり、戦闘モードをアピールする色に私には映った。また、不毛な、「年齢に対する議論」を「大会に向けた関心」に切り替えたいと思ったのだろう。そのサッカーへの高い意識が、彼のプレーには見事に表れていた。長友が見せた献身性。それこそが日本代表の金看板だ。
写真提供:産経新聞
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