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スポーツライター 青島健太の注目アスリート 心技体を磨いて、よみがえった 桃田賢斗

石宇奇と対戦する桃田賢斗(世界バドミントン最終日・男子シングルス、南京)

茶髪の目立つ髪型も派手なアクセサリーも、今の桃田賢斗選手には必要なかった。彼が手にしたものは、それ以上に輝き名誉なものだったからだ。バドミントン男子シングルス世界王者。今夏、中国・南京で行われた世界選手権で日本人初の優勝を飾ったのだ。

桃田は、差し出された色紙にこんな言葉を書く。「人として強くなる」

そこに込められた彼の思いに多くの人が共感と感動を覚えることだろう。彼がコートから離れ、試合から姿を消すことになったのは、2016年4月のことだ。この時の桃田の世界ランキングは2位。夏に迫ったリオデジャネイロ五輪でも当然のメダル候補だった。ところがここで彼の運命が変わる。違法賭博問題により無期限の試合出場停止処分を受けたのだ。当時の彼は「目に見えるぐらいの派手な生活をしたい」と豪語し、服装や容姿を含め、目立つ生活を送っていた。その中で違法カジノ店にも出入りしていた。その結果、日本代表メンバーから外れることはもちろん、試合にすら出られない日々が続いた。そこで彼は自分自身を見つめ直す。社会貢献活動に積極的に参加して、バドミントンにおける自身の恵まれた立場に気が付いた。目指したのは、人として強くなること。

桃田は地道に自分自身を強くする練習に取り組み始めた。世界を制するために必要なのは、スタミナ。

毎朝のランニングを欠かさず、練習後にもたっぷりと走った。左腕から繰り出される変幻自在のシャトルワークは、すでに世界レベル。そこにスタミナが加わったことで、長いラリーにも耐えて、さまざまな戦い方ができるようになった。それが見事に実を結んだのが今回の優勝だった。

実践復帰が許されたのは17年5月。しかし、復帰当初は思うようなプレーができなかった。周囲の目を意識して練習から全力でやり過ぎて、力んだり疲れたりしていたからだ。しかし、それも桃田が経験すべきことだった。自分のスタイルを取り戻したのは、3月のドイツオープンの後だ。「常に全力過ぎた」もっと力を抜いてリラックスしなければ良いプレーはできない。彼の心に余裕と自信が戻ってきた。

心技体を磨いて、日本のエースがさらに強くなって帰ってきた。しかし、ここで満足しているわけではない。彼が目指すのは東京五輪、そしてその先の世界だ。

写真提供:共同通信

あおしま・けんた スポーツライター&キャスター 1958年新潟市生まれ。埼玉県立春日部高校から慶応義塾大学、東芝を経てヤクルト・スワローズに入団。プロ野球初打席で初ホームランを記録。引退後は、オーストラリアで日本語教師を務め、帰国後、あらゆるメディアでスポーツの醍醐味を伝えている

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