高岡商工会議所(富山県)と高岡市は、同市出身の化学者高峰譲吉(1854~1922)が米国・ニューヨークに構えた別邸「松楓殿(しょうふうでん)」の一部を同所ビル1階ロビーに移設・再現し、3月27日に公開した。同事業は高峰博士の功績を後世に伝え、子どもたちの科学への関心を高めようというもの。正月を除き通年無料公開する。3月29日までの3日間は、松楓殿の調度品や高峰博士の功績をパネル展示で紹介する特別展を開催した。
高峰譲吉は、明治・大正時代に化学者、実業家として日本、米国を中心に活躍。消化酵素のタカヂアスターゼやアドレナリンの発見、商工会議所の祖で親交の深かった渋沢栄一と共に東京人造肥料(現日産化学)、理化学研究所などを創設したことで知られる。また、ワシントンDCポトマック河畔の桜の植樹への資金提供をはじめ、事業の成功で得た富を民間外交に投じるなど国際親善外交の上でも大きな足跡を残した。
松楓殿は、1904年に米国・セントルイスで開催された万国博覧会で日本館のメインパビリオンとして建設された建物で、万博終了後に高峰博士が譲り受けニューヨーク郊外に移築したものだ。現在の所有者であるNPO法人高峰譲吉博士研究会の滝富夫副理事長から生誕地へ寄贈したいとの申し出があり、同所と市は「高峰譲吉博士顕彰プロジェクト」を立ち上げ移設を計画、建物を再現できる広さがあることや、多くの人に見てもらえることなどから同所ビルへの移設を決めた。
同所ビルロビーには、46平方メートルのスペースに松楓殿内の「松楓の間」を再現。マツとカエデが描かれた壁画や天井画、博士愛用の家具を展示している。同プロジェクトでは今後、高峰博士の生誕祭などのイベントや子ども向けの講演会、新たな刊行物の発行、調度品などの巡回展などを計画している。同所は「高峰博士の功績を知ってもらい、高岡の新名所になれば」と話している。
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