日商 Assist Biz

更新

コラム石垣 2020年3月11日号 中山文麿

わが国の新型コロナウイルスへの水際対策は奏功せず、感染が全国に拡大した。今はこのウイルスの感染経路が追えない市中感染の状態にあり、持病を有する高齢者らが重篤に陥らないような防疫や治療を行う段階に入った。

▼このウイルスは、病気を発症していない無症状者も病原菌をうつす可能性が指摘されている。幸い、その致死率は致命的なほど高くなく、重症急性呼吸器症候群(SARS)とインフルエンザの中間程度といわれている。

▼中国は2003年のSARSの教訓を全く生かせず今回も初期対応に失敗した。武漢市の医者は人から人にうつることを警告していたが、政府は当該情報を隠蔽(いんぺい)し、感染の抑え込みに失敗した。

▼世界保健機関(WHO)のエチオピア出身のテドロス事務局長は緊急事態宣言を一時留保したり、各国が中国に対して渡航制限措置を取らないよう発表したりするなど、習近平国家主席に対して異例の忖度(そんたく)を行なった。本来、WHOは世界の人々の健康を第一義的に考えるべきなのに、個人的な事情から政治的にその警戒情報をゆがめた。

▼わが国は、当面、高齢者らの重症化を防ぐとともに、爆発的な流行に至らないよう手洗いの励行や濃厚接触を避けるような社会的行動が求められる。また、将来予想される致死率の高い病原菌による世界的大流行(パンデミック)や生物兵器禁止条約で取り扱いが禁止されているバイオ兵器が開発・使用される可能性もある。国の危機管理として、出入国管理法や新型インフルエンザ等対策特別措置法など関係法令の精査、日本版CDC(米国疾病管理予防センター)の新設、それにガイドラインの見直しなど適切に対応してもらいたい。

(政治経済社会研究所代表・中山文麿)、)

次の記事

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

日本政府の対応に海外から厳しい目が注がれている。豪華客船ダイヤモンド・プリンセス号。世界の各地から集まった人々の夢を乗せた船が、一変して新型コロナウイルスの感染源と…

前の記事

時事通信社常務取締役 中村恒夫

新型コロナウイルスの流行による経済への波及が懸念されている。製造拠点だけでなく消費地としても世界経済の中核を成す中国の経済が滞れば、日本に与える打撃は計り知れない。…

関連記事

NIRA総合研究開発機構理事 神田玲子

米国社会の分断を広げたトランプ大統領。11月3日の大統領選挙で再選されれば、分断はさらに深刻なものとなる。だが、民主党のバイデン候補が勝利したとしても、この分断を修復…

政治経済社会研究所代表 中山文麿

先月末、トランプ大統領とバイデン前副大統領は1回目の大統領選挙のテレビ討論会を行った。両候補者とも国政の基本政策を論ずることなく相手を口汚くののしり合っただけだった…

時事総合研究所客員研究員 中村恒夫

「風が吹けば桶屋がもうかるというが、その逆を心配している」と中堅企業の前取締役は懸念を示した。コロナ禍によって、すでにサービス業を中心に人員圧縮の動きが出ている。同…