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コラム石垣 2019年11月11日号 神田玲子

先月、二つの巨大台風が関東、東北地方を襲った。100人を超す犠牲者を出す大災害となった。知り合いの英国人から沈鬱(ちんうつ)な表情でこう聞かれた。「これほどインフラが整備されている日本で、なぜ、こんなに逃げ遅れた人が多いのか」と。彼女は、ハリケーンの通り道であるジャマイカで幼児期を過ごした。家屋は壊れやすく、インフラも脆弱(ぜいじゃく)なので、市民はハリケーンが来る前に退避し、漏電を防ぐために計画停電を実施していたそうだ。ジャマイカに比べて経済的に豊かな日本で、河川沿いの建物の1階に住む人々が、退避もせずに亡くなったことが信じられないという。

▼調べたところ、東日本大震災の時に亡くなったのは、ハザードマップで危険だとされていた地域の人々ではなく、ここは安全だと思われていた地域の人々だったという。インフラを整備すればするほど人々の意識に慢心が生まれ、防御できなかったときの被害は大きくなる。つまり、強靭(きょうじん)なインフラの整備が人々の危機意識を希薄にし、かえって命を危険にさらすことになる。これでは、費用をかけた対策も本末転倒となる

▼ハード中心の対策の落とし穴がここにある。インフラ整備は重要だが、一人一人の意識を高めることがそれ以上に肝心だ。ハードとソフトの両面からの危機管理が必要である。インフラが脆弱であることを前提としたジャマイカから日本が学ぶことも多いのではないだろうか。政府は今回の被災を受け、河川の堤防の強化などの災害対応を実施することを決めた。しかし、人々に「安心だ」と過信させることは危機管理とはいえない。人々の危機意識を醸成するための対策を望む。

(NIRA総合研究開発機構理事・神田玲子)

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