コラム石垣 2020年4月11日号 丁野朗

新型コロナウイルス感染症は、中国武漢市の局地的と思われた現象から、一気に世界的規模のパンデミック状況に発展した。感染は予想をはるかに上回る規模とスピートで拡大し、注目のオリンピックも一年延期といった事態に追い込まれた。

▼こうした一連の事態に強い影響を受けているのが、対個人サービス業や商業、観光業である。中でも観光業への影響は深刻である。本コラムが出る頃には事態はさらに深刻になっていると推察されるが、2月末時点のJNTO(日本政府観光局)の発表では、中国市場は対前年度88%減、韓国80%減、東アジア市場全体で72%減という壊滅的な状況である。その後の入国拒否や制限の拡大を考えると、さらに厳しい状況となろう。

▼もともと観光は、戦争、テロ、大規模災害や今回のような感染症に誠に弱い産業である。しかも小規模経営体が多く、日々の収入に依存する事業所が多い。この状況にどこまで耐えられるのかの対策と見通しが、いまの最も重要な経営戦略になっている。

▼2008年に観光庁が発足してから5年間、インバウンド客が全く伸びない時期があった。発足年のリーマンショックと3年後の東日本大震災である。しかしこの間、観光庁をはじめ日本の観光業界はビザの解禁や多言語、Wi‐Fi環境の整備、キャッシュレス化などの対応と国別の地道なプロモーションを粛々と進めた。その結果が、今日の大きな躍進につながった。

▼コロナ禍は、いつか必ず収束する時期が来る。その時期をどう読むかは難しいが、いま観光を含めて、産業界としてやるべき対応は、多忙な発展期にはできない、未来を見据えた戦略とその実現のための準備であろう。

(東洋大学大学院国際観光学部客員教授・丁野朗)

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