3月号では独自固有の長所を磨き、お客さまを惹きつける個性の重要性について紹介しました。今回は、それが見つからない場合の生き抜き方です。
25年間私が指導している靴の流通企業が、数年前に売上100億円を達成しました。経常利益は3億円、流通業ですから仕方ありませんが、今後のあり方としてプライベートブランドを開発して経常利益を上げていこう、ということになりました。これまではナイキやリーボックなどナショナルブランドを扱ってきたのですが、ブランド料もあって原価率が高いので経常利益が上がらなかったのです。
プライベートブランドを発売するためのプロジェクトチームをつくりました。しかし、なかなかヒット商品を生むアイデアは出てきません。外れると在庫を抱えることになるので、思い切ったこともできません。すでに並み居るナショナルブランド各社が知恵を絞って開発しているのですから、斬新な発想や個性的な形がそう簡単に生まれないのは当然のことと言えます。
そこで私は「発明と発見の間」という話をしました。発明とは何もない状態からつくり出すことなので簡単ではありません。しかし、発見はもともとある物の良い点を見つければいいのですから簡単です。そこで「ヒットしている20足のナショナルブランドの靴が何で売れているか、靴底、中敷き、色、金具など属性ごとの特徴を2つずつ見つけて書き出してみてください」とお願いしました。そしてその中から、特に一番の長所4つを一つの靴に組み込んでもらって、新ブランドを立ち上げたのです。
結局、全部まねしただけなのですが、長所が一足に4つも入っているので、「こんな靴は見たことがない」とお客さまは感じるのです。そうなると、これはもう発明です。その靴は大ヒットして、商圏の異なる靴屋さんからも仕入れたいと言われるほど売れるようになりました。それとともに経常利益も一昨年5億8000万円、去年は6億4000万円まで伸び、来年は7億円を超すでしょう。
独自固有の長所をつくれ、新しい物を見つけろと、上司や社長は言うかもしれません。もちろん新しいアイデアを生み出すことができれば良いのですが、発見をいくつも重ねてアレンジすることで、お客さまにとって初めての物をつくる方がそれよりもはるかに簡単なのです。お客さまも、まったく初めてのものには躊躇(ちゅうちょ)なさいますが、なじみのあるものや聞いたことがあるものは気軽に手に取るものです。
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担当:髙橋
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