テーマ別企業事例 技術と新発想で市場を生み出す スポーツを支える地域企業の技術力

事例2 日本の雪を知り尽くすわれわれが日本人のためのスキーをつくっていく

小賀坂スキー(長野県長野市)

明治44(1911)年、新潟県にて日本で初めてスキーが伝授された翌年、小賀坂スキーは長野県飯山市で日本のスキーメーカーの草分けとして創業した。以来、百年以上にわたり「日本の環境にふさわしいスキーはどうあるべきか」を常に考えた妥協のないものづくりを行っている。日本の雪を知り尽くし、性能と品質にこだわった同社のスキー板の生産台数は、国内トップクラスとなっている。

子ども用から上級者向けまで、さまざまな種類のスキー板を生産している

伝来で始まった家具職人の板づくり

小賀坂スキーが創業したきっかけは、地元の中学校の校長先生からスキー板の製造を頼まれたことだったと、同社三代目社長の小賀坂道邦さんは言う。

「うちはもともと飯山で家具をつくっていました。そこにスキーが伝わってきて、冬のスポーツとしてスキーが学校の授業に取り入れられることになった。そこで家具職人として学校に出入りしていた初代の小賀坂濱太郎が、飯山中学校の校長先生から頼まれてスキー板をつくり、40台を納入したのが始まりです。家具と同じく木を使ってつくるとはいえ、それまでスキー板など見たことも触ったこともなかったのですから、最初は大変だったと思います」

その後、家具づくりと並行してスキー板づくりを行う。大正8(1919)年には当時の宮内省の命を受けてスキー板を献上したり、翌年には軍隊用スキー150台を納入したりした。また、新たなスキー板の研究も独自に進め、昭和9年には日本で最初の5枚張りの合板スキーの開発に成功し、製造を始めている。それまでは単板といって、1枚の板で製造していたが、強度や耐久性などの面で問題があったのだ。

「戦争中は製造を中止していましたが、戦後はスキー専業メーカーとして昭和25年に再開しました。そのころは単板と合板のスキーが入り混じっていて、安いスキーは単板、高いスキーは合板という区分けができていました。合板は板を何枚も重ね合わせて使うので、強度も耐久性も上がる。うちは合板だけを使って製造していました」

昭和33年には株式会社小賀坂スキー製作所を飯山市で設立。翌年には長野市の工場誘致条例により、本社・工場を現在の場所に移転した。

木の素材にこだわり材料を厳選していく

同社は、創業以来、スキー板に使う芯材は木にこだわっており、ほかの素材を使ったことはないのだという。「スキー板には、木に勝る芯材はないとわれわれは思っています。ほかのメーカーさんでは、一時は脱木材の傾向があって、中に樹脂を吹き込んだものを使っているところもありましたが、最近は上級者や競技用のスキー板はほとんどが木の芯材に戻ってきています。つまりは、うちの考え方が正しかったということなのだと思います」と小賀坂さんは自信を持って語る。

同社がここまで木にこだわってきたのは、これまで経営者自らがカンナを持って板を削ってスキーづくりに携わってきたと同時に、自身がスキー選手として競技に参加してスキーを履き、木の板の良さを実感してきたからにほかならない。決して誰かの受け売りの知識から得たものではないという。

「しかも、木ならなんでもいいというわけではありません。その素材にもこだわっています。スキーの芯材としてわれわれが使っているのはイタヤやナラ、ブナ。ブナが最近では国内では足りなくなっているので、北米西海岸産のメープルを使っています。また最近では軽い素材が求められており、それに対応するために、繊維がしっかりしていて軽いサワグルミも使っています。その木材も、目の通った、ねじれや節目のない部分しか使わないので、使える部分が限られてきます」

そうやって吟味した木材も、そのまま使うことはない。2年間天日で乾燥させ、それから人工乾燥で木材の含水率を8〜10%にしたうえで工場で合板にしてスキー板に加工していく。同社では、材料の仕入れから製造まで、自社で一貫して行っている。

気質を生かした丁寧な製品づくりをする

同社のスキー板は、製造から完成まで何度も何度も入念なチェックが行われ、そのうえで出荷される。そのため、店頭に並んだスキー板は買ったらすぐにゲレンデで滑れるようになっている。

「買ってすぐに使えるというのは当たり前のこと。手を入れないと使えないなんていうものがどこにありますか。うちの工場には『自分ならこの製品を喜んで買うであろうか』というモットーが掲げられています。1台1台丁寧に丹念に真摯(しんし)に、精度の高いものをしっかりつくる。こういった日本人の気質を生かした製品づくりをしていかなければいけません」

かつては国内に40社以上あったスキーメーカーも、スキーブームの終わりとともに撤退や廃業、倒産が相次いだ。今では同社を含め、主なメーカー3社を残すのみとなっている。

「海外から大手ブランドの製品が入ってきており、国内でも世界を相手に競争しているようなものです。『日本の雪を知り、日本のスキーヤーを知り、日本人のためのスキーをつくる』。これがうちのポリシーです。スキー板やスノーボードの改善・改良は尽きることがない。さらにみなさんに満足していただける製品をつくり、次もまた小賀坂にしようと言っていただけるものづくりをしていきます」と小賀坂さんは熱意を持って語る。

数少ない国内スキーメーカーとして、同社はこれからも日本のスキーヤーのための製品をつくり続けていく。

プロフィール

社名:株式会社小賀坂スキー製作所

所在地:長野県長野市栗田653

電話:026-226-6827

HP:https://www.ogasaka-ski.co.jp/

代表者:小賀坂道邦 代表取締役社長

従業員:120人(パート含む)

※月刊石垣2017年9月号に掲載された記事です。

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