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テーマ別企業事例 技術と新発想で市場を生み出す スポーツを支える地域企業の技術力

事例4 自社ブランドによる製品開発で、トップアスリートに認められる製品をつくる

コーマ(大阪府松原市)

スポーツ界では近年、肉体を適度に圧迫することでパフォーマンスの向上や疲労軽減などの効果を図るスポーツ用アンダーウエアが注目を集めている。靴下メーカーのコーマは、運動における靴下の重要性を研究し、スポーツ用ソックスの開発に挑んできた。そしてその技術力を生かし、立体的な構造を持つ高機能ソックス「3D(スリーディー) SOX」を開発、自社工場で一貫生産を行っている。

立体的な構造を持つ3D SOXには、コーマが開発したさまざまな技術が生かされている

靴下に求められる機能を研究していった結果

コーマが開発したスポーツ用高機能ソックス「3D SOX」。3D(立体的)という名前のとおり、足の形に合わせた左右非対称の立体的な構造で、土踏まずや親指・小指の付け根、かかとなど、足の動きに重要な部分のフィット感を向上させている。それにより靴下のズレが少なくなり、またバネの機能を果たす土踏まずのアーチが適正な位置で安定する。そのため、足の動きがスムーズになり、足が疲れにくくなる特徴を持っている。この構造について、同社社長の吉村盛善さんはこう説明する。

「足は左右非対称なのに、一般的な靴下は左右対称のものを足に無理やり合わせて履かせている。これでは運動時にズレたり布が余ったりして、十分に機能を果たすことができない。土踏まずは骨の集まるところに筋肉と腱でアーチがつくられている。これがバネの役割を果たしていますが、足が疲れてくるとアーチが下がってくる。それを常によい形に保つために、このような構造にしました。靴下の機能には何が求められているのかということを研究してできたのが『3D SOX』なんです」

同社がこの地で靴下製造業を始めたのは大正11(1922)年。当時、大手紡績工場で働く人たちに支給する靴下をつくり始めたのがきっかけだった。

「当時は各工場で大勢の女工さんが働いていて、制服や制帽と一緒に靴下も支給していました。私の曽祖父はもともと河内木綿の産元をやっていて、その関係もあって、祖父の代になって、大手紡績工場に靴下を納めるようになったんです。以来、うちは靴下製造一筋でやってきました」

スポーツ用ソックスの製造を始めたのは、昭和30年代半ば、ナイロンの流行がきっかけだった。

メーカーからの課題を解決しその技術を生かす

「実はうちは旧来の紡績との関係が強く、ナイロンの流行に乗り遅れたのです」と吉村さんは語る。「後追いをするのではなく、綿にこだわることにしました。そこでスパンデックス(ポリウレタン弾性繊維で、伸縮性に優れる)を綿に引きそろえて編み込み、綿のように吸湿性がありながら、ナイロンのようによく伸び縮みする靴下を開発しました。吸湿性に優れるが伸縮性がなくずり落ちやすい綿の靴下や、伸縮性はあるものの吸湿性に乏しく蒸れやすく、すべりやすいナイロンの靴下しかなかった時代に、スポーツ用の靴下として画期的なもので、1970年代のボウリングブームには、ボウリング用ソックスとして売り出されました。それまでは自社ブランドを持って靴下を製造・販売していましたが、そこからはOEMに特化して生産していくことになります」

それからしばらくすると、今度はワンポイントソックスのブームがやって来た。傘やワニといったブランドロゴの刺しゅうが入った白い靴下が人気となった。「後にスポーツアパレルとよばれる分野の先駆けとなるメーカーと組み、ワンポイントソックスのブームでは業績も非常に伸びました」

スキーの分野でも、同社が得意とする技術を使い、甲の部分にパイル地を使った製品がよく売れた。サッカー用ストッキングもメーカーと一緒に開発していった。「当社としてはスポーツソックスをつくることよりも、うちの技術を使ってもらえたことがうれしかった。メーカーから課題をもらったら、当社の技術でそれを解決していき、それを全部使ってもらえる。これがその後、スポーツソックスの分野に特化していった理由です」

中小企業が生き残るためには自社ブランドが必要

しかし、平成に入るとバブルがはじけてデフレが始まり、安い輸入品が大量に入ってきた。靴下は3足で千円以下が普通の時代になり、品質よりも安さが求められる時代に入っていった。「ここで安さを追求していっても生き残っていけない。新たな技術を開発して、たとえ値段は高くても、もう一つ上の高品質の製品をつくっていくことに決めました」と吉村さんは力を込めて語る。

靴下に求められる機能は何か、足は左右非対称なのに靴下はなぜ左右対称なのか。吉村さんは靴下のスケッチを何枚も描き、新たな靴下の形を追求していった。靴下を編む機械を制御する特殊なコンピュータープログラムも自社で開発し、自分たちの思いどおりに編めるようにしていった。そうして1年がかりで完成したのが、1足2500円というスポーツ用高機能ソックス「3D SOX」だった。この技術は平成18年に基本特許を取得している。

「値段が高いということもあり、最初の2年間はあまり売れませんでした。しかし、スポーツ衣料品の外部ブランドのライセンス供与を受け、そこで販売を続けていくうちに、多少高くても靴下でいいプレーができると、徐々に認知されていくようになりました」

そして21年には、自社ブランド「FOOT MAX」で3D SOXの発売を始めている。「中小企業も自社ブランドがないと生き残れない。靴下は中小企業でも最先端のものがつくれる数少ないものの一つ。これからも足にこだわるニッチな部分を中心に、自社で開発を進めていき、トップアスリートに認められる製品をつくりたいと思っています」

スポーツ用アンダーウエアと同様、高機能ソックスもアスリートたちに注目されるようになる日は近いかもしれない。

プロフィール

社名:コーマ株式会社

所在地:大阪府松原市阿保3-6-27

電話:072-332-1563

HP:http://www.cooma.co.jp/

代表者:吉村盛善 代表取締役社長

従業員:98人

※月刊石垣2017年9月号に掲載された記事です。

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