人間としての尊厳を守り 幸福なひと時を過ごしていただけるように
株式会社はなのわ 代表取締役社長 浦川 嘉子
母の認知症が契機に 周囲も同じ問題を抱えていた
母の認知症がきっかけで、介護を勉強し、ホームヘルパー2級の資格を取得しました。その後、母の認知症が徐々に進行し目が離せなくなっていきました。そんなとき地域の仲間にも同じ問題を抱えている人が何人もいることを知ったのです。これから先の課題として老人介護が目の前にあったため起業しようと思い立ちました。
創業当時を振り返ってみると、「託児所」は聞いたことがあるけれど「宅老所」を知る人は限られていました。事業内容を理解してもらうために「託児所は子どもをお預かりする所で宅老所は老人をお預かりし、宿泊もできる所です」と説明していました。また、開業した伊万里市内では初めての宅老所だったため、ケアマネージャーの方でも利用の仕方も分からない方がほとんどでした。
それから8年たち、市内にたくさんの宅老所ができました。現在では、宅老所を新たに開設される方の申請のお手伝いをしたり、職員研修などの受け入れができるまでの施設に成長しています。90人近くの職員が勤務し、100人以上の方にご利用いただくまでになったのです。
1対1の介護を目指す
近年は特に職員の質の向上に取り組み、会社として支援できるようになりました。働きながら看護師資格を取得した社員もいます。今では、介護福祉士取得のための技術研修なども行い、50人近い職員が国家資格取得者(介護福祉士、看護師ほか)となり、万全の体制で業務に携わっています。
事業所内での組織的な取り組みとして〝看取り介護〟を始めました。看取り介護とは、近い将来に死に至ることが予見される方に対し、その身体的・精神的苦痛、苦悩をできるだけ緩和し、死に至るまでの期間、その方なりに生き抜くことができるように介護することです。宅老所のような介護施設で看取り介護を行う際に重要なことは、利用者本人と家族の了承はもちろんですが、緊急時の職員対応と医療機関との連携の二つです。
緊急時の職員対応では、24時間連絡がとれる職員間の緊急連絡対応や職員への教育と責任分散が重要です。医療機関との連携では、企業母体が違うため、お互いの所轄区分をしっかり説明した上で連携を図っています。こうした積み重ねで在宅扱いの宅老所での看取り介護が実現できました。
将来的には、1対1の介護を目指しています。現状でも職員一人が3~4人の利用者の介護をしている状況です。今後、高齢化の進展や、介護人材の不足、人件費の観点などのからみても1対1の介護の実現は難しいということは認識しています。しかし、医療や介護分野にロボット産業が進出してきており、それを利用すれば1対1の介護が実現できるかもしれません。一歩ずつでも利用者の不満解消と人間としての尊厳を守り、安心して幸福なひと時を過ごしていただけるように試行錯誤していきたいと思っています。
会社データ
社名:株式会社 はなのわ
所在地:佐賀県伊万里市
創業:平成18年
事業概要:老人福祉事業(デイサービス、宿泊サービス、食事サービス)
※月刊石垣2015年11月号に掲載された記事です。
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