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テーマ別企業事例 小規模企業でも勝てるワケがある!

従業員が少ない小規模企業でも、元気な会社がある。地方でかつ小規模という逆境を跳ね返して、独自のアイデアで新たな商品を生み出し販路を開拓、顧客から高い評価を受けている“秘密”に迫る。

事例1 夫婦2人で顧客ニーズに向き合い高い満足度を維持

天童プップ(山形県天童市)

オーダーメード枕を製造・販売する天童プップは、社長の山本正廣さんが大手鉄鋼メーカーを定年退職後に起業し、夫婦2人で営む会社だ。現役時代は縁もゆかりもなかった寝具の分野だが、独自の製造手法上の工夫と客の悩みやニーズと真摯に向き合う姿勢により、累計販売数は2万個を超えた。しかも返品率0・5%という高い顧客満足度を誇り、安定した経営を続けている。

枕本体のサイズは縦43×横63㎝。

抱き枕で起業するもまったく売れず

枕が変わると眠れない、という人は意外に多い。これは環境が変わると寝つきが悪くなることのたとえだが、実際に枕は眠りの質を左右し、健康にも影響を与える。

「日本人の多くは肩こりに悩んでおり、今や国民病といっても過言ではありません。私は高すぎる枕が大きな要因の1つだと思うんですよ」と、天童プップ社長の山本正廣さんは切り出した。

同社は、平成5年に設立したオーダーメード枕の製造販売会社だ。山本さんが大手鉄鋼メーカーを定年退職し、夫婦でのんびり暮らしていたある日。明け方3時ごろに突然目が覚め、「枕屋をやろう」と思い付いたのだという。どんな枕をどのように販売したら利益が出るかなど、怒涛のようにアイデアが湧き出てきて、朝日が昇るころには設計図が出来上がっていた。

そのメーン商品に考えたのが、抱き枕だ。サラリーマン時代に通勤の疲れを癒やすため、抱えて眠る枕をあちこち探し回ったが見つからず、妻の美枝子さんにつくってもらった経験がヒントとなった。きっと他にも抱き枕が欲しいという人はいるはず――。既存市場を調べ、特許検索でも類似品がないことを確認し、売れると確信した。

「枕についてまったく知識がなかったので、枕関連の会社に飛び込んで、材料の入手方法や枕のつくり方など、一から教えを請いました。見ず知らずの私に、よくぞ親切に教えてくれたものです。そのノウハウを基に自宅敷地内に作業場を建て、家内とつくった抱き枕をワンボックスカーに載せて行商に回りました」

旅館やペンション、介護施設や病院、個人宅などへの訪問販売、市町村役場での職域販売など、東北一円から長野県の辺りまで足を延ばしたが、まったく売れなかった。当時市場にない商品だけに、目的や使用法を説明しても、「よく分からないからいらない」と言われてしまったという。やがて大手寝具メーカーも抱き枕を市場に投入し始めたことを受け、方向転換を決める。

オーダーメード枕をインターネットでも販売

「抱き枕は売れませんでしたが、行商する中で『枕が合わなくて困っている』という話を多くの人から聞きました。考えてみれば、一人ひとり骨格は違うし、年齢や性別によっても合う枕は変わってきます。しかし、当時の枕は種類が乏しく、既成品に人が合わせるしかありませんでした。これはビジネスチャンスと思いました」

平成8年、山本さんは行商をやめて5坪の店舗を構え、オーダーメードに軸足を移す。そして新たに、内部が4カ所に分かれ、各パーツのビーズを増減して高さが調節できるオリジナル枕を考案。来店客の悩みやニーズを聞き、採寸した上で枕をつくる商いをスタートさせた。ミニコミ誌に広告を出したり、市の広報誌で紹介されたりするうちに、徐々に客が増え、口コミで広がって遠方からも足を運んでもらえるようになった。

店が軌道に乗ってきた10年ごろから、インターネット販売にも乗り出す。注文フォームに、年齢、性別、身長、体重、頭の形状、首の下の隙間、敷布団の硬さなどを入力してもらい、その情報を基に枕をつくって配送する仕組みだ。

「直接会ってもいない人の枕をどうつくるのかとよく聞かれますが、来店客の製作データの蓄積があるので、およその推測はつきます。それを参考に注文票と向き合い、2人で『私はこれくらいがいいと思う』『いや、こうした方がいいのでは』といった感じで話し合いながら、枕に入れるビーズの量を3g、5gと調整して、最適の高さに仕上げていきます」

商品配送時には、ビーズと計量カップも同梱し、高さが合わない場合は、客がビーズを増減できるように配慮している。また、必要に応じて電話やメールでカウンセリングも行う。このように一人ひとりに合った枕を提供することにより、「寝つきがよくなった」「肩こりが軽減した」「いびきが少なくなった」など、顧客満足度を高めていった。

量的拡大よりお客さまとの関係重視

設立から20数年が過ぎ、累計販売数は2万個を超えた。リピーターが多く、紹介購入率も約50%に上る一方、返品率はわずか0・5%と、同社の商品はファンの心をがっちりつかんでいる。その結果、「夫婦2人で食べていくには十分な売り上げ」(山本さん)を維持しているという。

経営が順調な理由として、夫婦でやっていることが挙げられる。2人しかいないがゆえに、扱うアイテム数を絞り、オーダーメードを打ち出して、「普通の商品を特別な商品にした」ことが奏功した。2人で意見を出し合うことも、より精度の高い枕づくりに貢献している。また、過度に量的拡大をすることなく、むしろ個別対応を徹底し、納得するまでとことん向き合うことで、お客さまとの信頼関係を構築した。それが高いリピート率と紹介客を増やす結果につながっている。

「まあ、いいことばかりではありません。二人はいつも顔を突き合わせているから、ときには意見が食い違って言い合いになることもあります。でも、勤めていたころと比べれば、明らかに夫婦のコミュニケーションが増え、あうんの呼吸で仕事ができることもプラスに働いています」と少し照れ気味に話す。

近年、睡眠の重要性が広く知られるようになり、オーダーメード枕を扱う寝具メーカーやショップは増えている。それでも同業者の動向はほとんど気にしないと山本さん。2人だからできる最大限を追求し、「枕はオーダーメードが常識」をさらに目指していきたいと、力強く締めくくった。

会社データ

社名:有限会社天童プップ

住所:山形県天童市清池18

電話:023-655-7088

代表者:山本正廣 代表取締役

従業員:2人

※月刊石垣2016年7月号に掲載された記事です。

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