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テーマ別企業事例 少子化時代に商機あり ベビー・キッズ市場を狙え

少子化が叫ばれて久しい。しかし、ベビー用品を含む子ども関連ビジネスは、12兆円規模ともいわれる巨大な市場でもある。しかも、子ども関連市場は、孫にモノを買ってあげたいシニア世代とも密接に関係しており、今後ますます有望な分野となる可能性を秘めている。チャンスを逃さず新たな市場へと舵を切った、各地の企業をリポートする。

事例1 砂糖販売店から業態変更 屋内型遊戯施設で全国展開へ

ユーエスマート(三重県伊勢市)

三重県伊勢市に本社を置く、日本産業推進機構(NSSK)グループのユーエスマートは、15分100円で遊び放題の屋内遊戯施設「Kid's US.LAND」および「US.LAND」などを運営している。社名に〝マート〟という名前がついているとおり、もともとは食料品を販売していた同社だが、そこからベビー・キッズ市場に乗り出し、大きな成功をつかんだ。

最近子どもたちに人気のビーズ塗り絵。教室も開催している

物販からサービス業へ 転機は長引く不況

ユーエスマートの始まりは、明治2(1869)年に創業した田口砂糖店である。その後、砂糖以外の食料品も取り扱う企業となっていったが、平成4(1992)年に大きく業態転換していくことになる。それが、100円均一の商品を販売するコンビニ「US.MART」伊勢本店のオープンだった。

同社代表取締役社長の田口喜啓さんは、会社のこれまでの経緯について説明する。「私が留学していたとき、現地でワンダラーショップと呼ばれる1ドル均一のお店を見て、これを日本でやったら面白いと考えていました。大学を卒業して食品卸の会社に勤めていたのですが、実家の店がある商店街に国の『高度化事業』の適用が決まったことを父からの連絡で知り、店に戻りました。しかし砂糖店を続けても将来性はない。そこで平成4年に始めたのが、100円均一のコンビニでした」

100円ショップなどまだ少なかった時代だったため店は繁盛し、その勢いでフランチャイズ展開して50店舗以上にまで増やしていった。その一方で、田口さんはこの店の限界も感じていたという。

「商品が100円均一なので、どんなに頑張っても、ある一定以上には利益が上がらないんです。そこで、100円コンビニの2階に併設されていたカラオケボックスにヒントを得て、新たな遊戯施設として発展させていきました。これが、15分100円で遊べる時間制の遊戯施設、US.LANDです」

US.LANDは、カラオケに加えてビリヤード、ダーツ、ネットカフェ、卓球などが楽しめる複合施設として、12年に1号店がオープン。直営店とフランチャイズ店の両輪で店舗を増やしていった。15分100円という料金は、もともとが100円コンビニだったことに由来している。この料金設定は、現在のKid's US.LANDにまで続いている。

「US.LANDは大学生以上が客層のメーンで、集客時間が夜に集中していました。そこで、昼間も集客できる業態は何かと考えたときに思い付いたのが、お子さんから年配の方までの幅広い方々が遊んで楽しめる家族向けの施設でした」

外で遊ぶことが少なくなった子どもたちが安全に遊べる場

そんなとき、ショッピングセンターからテナントとして出店しないかという話が舞い込んできた。長引く不況でテナントの撤退が相次ぎ、空き店舗が増えてしまったので、その対策として、物販ではなく家族で遊べるようなサービス業を入れたい、ということからの打診だった。ショッピングセンターに進出することで、ユーエスマートのビジネスは大きく展開していくことになる。

郊外にあることが多いショッピングセンターは、駐車場を完備する大型施設。週末ともなると、車に乗って、多くの家族が小さな子どもを連れてやってくる。

「それまでのUS.LANDという、どちらかというと夜型の業態のままではショッピングセンターでは集客できないだろう、昼間の時間帯に家族連れを集客できる業態に変更しなければ、という考えから、お子さまに特化したKid's US.LANDが生まれました。お子さまが遊んでいる間に、一緒に来たお父さんお母さん、おじいさんおばあさんにも楽しんでいただけるよう、マッサージチェアや雑誌コーナー、卓球台なども設けました」(田口さん)

そうして、20年に宮城県仙台市に直営の1号店がオープンすると大評判となった。そして、他のショッピングセンターからも出店の引き合いがどんどん来るようになっていった。

その後の展開について、同社執行役員で事業開発部部長の奥秋典子さんが説明する。

「お話をいただくのは新規にオープンするところだけではなく、これまで長くやってこられて、近隣に新たなショッピングセンターがオープンするので何か差別化できる仕掛けをつくりたいと、お声掛けいただくことも多いですね。それまではショッピングセンターへの出店には多額の保証金が必要で、弊社のような15分100円で安く遊んでいただく店には到底出せる額ではありませんでした。ですから、最初にお話をいただいたときには驚きました」

リーマンショックが発生した20年は、それをきっかけに世界的な景気の落ち込みが始まり、日本経済も大きな打撃を受けた。そのため、ショッピングセンターでは店舗数が減り、その打開策として家族向けのテナントを入れるところが増えていた。Kid's US.LANDの展開は、時流に乗っていたといえる。

「さまざまな要因から、外で遊ぶ子どもの数が減ったということもあります。公園にしても、子どもが万が一ケガをしたらということで、遊具が撤去されることもあります。外には子どもが遊べるところが少なくなり、屋内なら安心して遊ばせられるということで、Kid's US.LANDは大人にも子どもにも喜ばれているのだと思います。1年に1回行くところがディズニーランドなら、うちは気軽に1カ月に1回でも、毎週でも行ける。それに体を動かして遊ぶのは、子どもが一番喜ぶことですから」(奥秋さん)

少子化は進んでいるがまだまだ市場は大きい

また、ショッピングセンター内の他店舗との協力も、Kid's US.LANDの発展に一役買ってきたと、同社執行役員で営業推進部部長の広瀬健一さんは言う。

「大人1人分の料金を払えば保護者の方は入れ替わりが自由。最初にお父さんが子どもを見て、次に交代したお母さんが見ることも可能です。その間に、他方は他のお店でお買い物もできます。飲食物の持ち込みも可なので、スーパーや飲食店で食べ物を買ってきて、施設内で食べることもできます。これによりショッピングセンター全体の売上が上がるので、弊社の出店は喜ばれるのだと思います」

20年からの8年間で全国約130店舗にまで増加した(今年5月末現在)。特に昨年は30店舗増、今年はこのままいくと40店舗増と、急激な伸びを示しているという。

「ただし、子ども向けの施設なので、安全面には細心の注意が必要です。施設内は壁で仕切られていないので、目を離した隙にお子さんが外に出て行かないように、柵をジグザグに置いて外に出にくいようにしています。また、万が一何か起こったときの対応についても、従業員への教育を徹底しています」(広瀬さん)

子どもたちが楽しく遊ぶ場所であることから、店内での禁止事項についても、例えば「このボタンは押しちゃダメ」ではなく、「お母さんに押してもらってね」など、否定的にならない言い方をするよう、気を配っているという。

今後ますます少子化が進むかもしれないが、ユーエスマートでは大きな心配はしていないという。「新しくオープンした店に、多くのお客さまが来ていただいているのを見ると、まだまだこの市場は拡大すると感じています」と奥秋さんは言う。

Kid's US.LANDの今後について、社長の田口さんはこのように展望を語る。

「弊社では8年ごとに事業内容を変化させています。4年に100円コンビニのUS.MARTがオープンし、12年にUS.LAND、20年にはKid's US.LANDが開店しました。そして、今年は28年。年内にできるかどうかは分かりませんが、今は海外への進出を考えています。特にアジアでは、子どもの数が増えている国も多い。そういうところを視野に入れたいと思っています。新しいパートナー、NSSKグループとともに国内外で1000店舗への拡大を企画しています」

子どもたちが元気に明るく遊べるところにこそ、明るい未来がある。ユーエスマートはそんな未来の子どもたちのために、これから新たな道をNSSKグループのグローバルな運営実績、人材とネットワークを活用し、新たな道を切り開いていく。

会社データ

社名:ユーエスマート株式会社

住所:三重県伊勢市曽祢1丁目11-13

電話:0596-25-5000

HP:http://www.kidsusland.com/

代表者:田口喜啓 代表取締役社長

従業員:700人(パート従業員含む)

会社データ

社名:日本産業推進機構グループ

HP:https://www.nsskjapan.com/

※月刊石垣2016年7月号に掲載された記事です。

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