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テーマ別企業事例 少子化時代に商機あり ベビー・キッズ市場を狙え

事例2 菓子の原料の野菜フレークがベビーフードとして大ブレーク

三葉製菓(北海道旭川市)

北海道・旭川にある老舗かりんとうメーカー、三葉製菓。しかし、老舗の名にあぐらをかくことなく常に新たな領域に挑戦し、地域産の原料にこだわる新商品を世に送り出し続けている。最近のヒット商品は、顧客の声をヒントに野菜かりんとうの材料から開発した「野菜フレーク」で安心安全な離乳食として道内外の母親たちから高く支持され、新たな顧客の開拓にも成功した。

加熱済みのため、水やお湯で溶かせばすぐに食べられると重宝されている

看板商品の安売りはせず新商品開発へ挑んだ二代目

かりんとうといえば、どこの家庭でも常にちゃぶ台に置いてある〝昭和〟を代表する菓子の一つであった。最盛期には全国で400社以上の菓子メーカーが製造していた。ところが、今では約50社まで激減し、北海道でも4社を数えるのみとなっている。今回取材した三葉製菓は、昭和6年に旭川で創業した老舗で、北海道のかりんとう屋・「北かり」ブランドとして、全国に多くのファンを集めている菓子メーカーである。

「かりんとうが最も売れていたのは昭和40年代。農家を回れば、1斗缶入りが100個も200個も売れたものです。ところが高度経済成長を経て、農業の機械化による人手の減少や市場にポテトチップスやえびせん、チョコレート菓子などが登場するにつれ、かりんとうの需要が減っていきました。同業者は次々と廃業や転業し、当社の経営にも影響が及んでいました」と同社社長の水上(みずかみ)崇さんは当時を振り返る。

昭和50年以後、そんな状況を打開するため、同社は土産菓子の製造に乗り出す。水上さんの父である2代目社長は、既存商品を安売りする道は選ばず、新ジャンルの商品開発に取り組んだ。そうして新たに、焼き菓子であるバターロールクッキーやチョコサンドクッキーを開発し、発売する。チョコをサクサクしたクッキーで包み込んだもので、軽い食感と口溶けのよさからたちまち北海道の人気土産となった。

「当時は北海道発着便のジェット化が進み、北海道を訪れる観光客が増えていた時期。観光売店もあちこちにでき、当社の新商品の売上が急上昇していきました。しかし、他社もこぞって土産菓子に参入してきたのです。当社としても安心しているわけにはいきませんでした」

そこで同社は次なる手として、各地の物産展に着目する。全国の百貨店に出向いて実演販売をすることにより、同社ならではの、かりんとうのPRに力を入れ始めた。

ヒットの理由は地場産の食材にあり

土産菓子の成功以降、同社は商品に使う小麦粉をはじめ、牛乳、砂糖、しょうゆ、そば、昆布など、北海道産へのこだわりを強めていく。そうして全国各地のかりんとうと差別化した上で、物産展では商品の実演販売に精を出した。そんなある日、お客さまから「もっと北海道らしいものをつくってよ」と予想外の提案を受ける。

「そこで考えた末、ジャガイモやカボチャ、トウモロコシ、ニンジンなど、北海道産食材を生地に混ぜた野菜風味のかりんとうを試作したところ、彩りがよく味にも変化が出て、いけると確信しました」

それを商品化するに当たり、茹でてつぶした野菜を小麦粉と混ぜ合わせるのは労力がかかるため、つぶした野菜を乾燥させることを思い付く。原料なので味付けはせず、添加物も一切使わずフレーク状に仕上げた。

「物産展では当初、『こんな原料を使っている』という見本のつもりで、野菜かりんとうの横に並べて置いていたんです。ところが回を追うごとに、野菜フレークを目当てに来る方がいることに気付きました。何に使うのか聞いてみると、ポテトサラダやコーンスープという声とともに、離乳食に利用している人がたくさんいたんです」

物産展ではまとめ買いするケースが多く、かりんとうの1日の売上が10万~15万円なのに対し、野菜フレークは30万円を売り上げることもあり、いつしか一番の売れ筋商品となっていった。

素材の味をアピールし海外需要も視野へ

客の利用目的が分かったこともあり、同社は野菜フレークを使ったレシピのチラシを作成し、物産展で配るなどして販促に努めた。平成12年に開始したインターネット販売や、14年に旭川でオープンしたかりんとう専門の直売店でも、「魔法のように30秒で離乳食ができる」をうたい文句にアピールした。その結果、発売から約20年たった今でもコンスタントに売れ続けており、同社の売上全体の約20%を占める主力商品の一つにまで成長した。

顧客の提案をヒントにして誕生したベビー向け食品だが、少子化が進む現在の日本において、今後どのような展望を描いているのだろうか。

「当社の野菜フレークは素材の持つ味を生かしていることが強み。今後は、海外需要が確実に伸びてくるでしょう。現にアジア圏からの引き合いが急増しており、中には『トウモロコシフレークの年間生産分を丸々買い取りたい』なんて申し出もあるほど。これからも北海道産の野菜にこだわり、商品の付加価値を高めていきたい」と、水上さんは力強く語った。

会社データ

社名:三葉製菓株式会社

住所:北海道旭川市永山3条4-1-5

電話:0166-37-3901

HP:http://www.kitakari.co.jp/

代表者:水上崇 代表取締役

従業員:43人

※月刊石垣2016年7月号に掲載された記事です。

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